高度に抽象化された現代数学は、さらなる抽象化と同時に私たちの身近に新しい題材を求めています。数学プログラムでは数理解析と情報数理の2大分野によってこの動向に思い切った対処の仕方をしています。数理解析分野では純粋数学の立場からきめ細かな教育・研究を行い、情報数理分野では時代のニーズに応えて情報科学に関する教育・研究を数学の立場から行っています。数学プログラムで私たちと一緒に学んでみませんか?

カリキュラム

授業では、2年次以降、純粋数学の3つの柱でもある代数(数と式)・幾何(図形)・解析(微分や積分)を中心に学びます。

純粋数学の3つの柱を学んだ後、3、4年次では数学特別演習や卒業研究と高度な数学を学ぶ授業/研究へと進みます。数学特別演習や卒業研究では自分自身でテーマを設定し、数学のみならず理学全体の背景を理解します。発表を通じて他者と内容を共有・検討することで、自分自身の考えが論理的に正しく整理されていくプロセスを体感できることでしょう。

本プログラムでは、カリキュラムを学ぶことによって、専門的な知識を活かした職業(教育系、金融、官公庁、IT系)に就くことができます。企業で数学が必要なの?と思う方もいるかもしれませんが、現在いくつもの企業から幅広い知識を持った人材が求められています。数学は具体と抽象を横断的に学ぶ学問であり、「問題をどのように解いたらよいか」ということは数学のみならず企業でも求められていることなのです。

授業風景

研究紹介

数学プログラムで体系的に学んでいくとみえてくるトピックスをいくつか紹介しておきましょう。

2次方程式の解の公式は習いましたよね?実は3次方程式、4次方程式までは代数的な解の公式が存在します。ところが、一般の5次以上の方程式には、代数的な解の公式が存在しないことが知られています。「代数的な解の公式」「存在しないことが分かる」とはどういうことでしょうか?これは代数学のガロア理論を学ぶことでわかります。また、右の図は正二十面体ですが、この幾何学的な対称性が代数学を用いて説明できます。数と式に関する代数学の概念が、図形の分類につながっているのは不思議な気がしませんか?

図形
正20面体
条件収束級数
高木関数のグラフ

式を見てください。上側は1=1/1+1/3-1/2+…であり、下側は2=1/1+1/3+1/5+…となっていますね。実はそれぞれ右辺に登場する数は同じで、順番だけを変えたものです。ところが、収束する値は異なるという奇妙なことが起こります。さらに、右辺の項を並べ替えることで、任意の値に収束させることもできます。皆さんが高校数学で感じている収束のイメージとはかなり違うのではないでしょうか?この理由を深く学ぶこともできます。

図(d)は高木曲線と呼ばれる関数のグラフです。この関数は、図(a) 、(b) 、(c) 、(d)のようにある操作を無限回繰り返すことで定まります。この関数にはいくつか面白い特徴があります。まずこの関数はどの点でも連続ですが、どの点でも微分不可能であることが知られています。次に曲線の長さに対応するものは無限大となります。ところが、囲まれる面積(曲線とx=0とx=1とy=0で囲まれる青い領域)は有限となります。これらの特徴は皆さんよく知る関数のイメージとは違うのではないでしょうか?このような関数を研究するには、大学で学ぶ「厳密な」解析学が必要です。

学生メッセージ

数学科4年

数学プログラムは根気強く数学と向き合える人、数学が大好きな人、論理的思考力を養いたい人におすすめのプログラムです。理由としては、大学での数学は高校までの数学と違い、数学の本質を学ぶことを主としているからです。そのため、高校の時よりも論理的思考力が多くの場面で要求されます。私は高校の時と比べて、内容がすぐに理解できないことが増え、はじめは教科書を読むにも時間がかかってしまいました。しかし、自分でじっくりと考え、友達と講義の内容について話し合う機会を作り、やっと理解できたときはとても爽快でした。最初は行き詰まってしまうと思いますが、数学プログラムには数学を求めてきた仲間がたくさんいます。友達や先生と話し合い、新たな考えや発見を見つけましょう。また学生生活では、数学や一般教養の勉強以外にも様々なことを学んでいくことができます。例えば、部活やサークル、バイトや趣味など、皆たくさんのことに挑戦しています。皆さんも大学で多くのことを学び、自分の可能性や考えを拡げてください。

数学科4年

この方程式に解は存在するのか、どんな関数が積分可能なのか、近い・遠い・つながっているとはどういうことなのか。このような問いに対して厳密な議論を重ねるのが大学の数学プログラムという場だと思います。大学数学が高校数学と違って証明が多いと言われるのはこのためです。高校では平均値の定理やロピタルの定理など何かの問題を解くために使っていた定理を数学プログラムでは証明することになります。
僕にとって、大学の数学は哲学と言ってもよいものです。哲学(philosophy)の語源は、ギリシャ語で「愛」と「知」を意味する言葉を合わせたphilosophiaという言葉であり、哲学とは知を愛することです。数学が好きで興味があるが数学プログラムでやっていけるか不安な人もいるかもしれません。確かに難しい計算や証明を難なくできることに越したことないでしょう。しかしながら、数学を知りたい、より深く学びたいという気持ちもそれと同じぐらい大事な素質なのではないかと思います。数学が好きだという人は数学プログラムへの進学を考えてみてはいかがでしょうか。

TOPICS

教員と研究テーマ

上田 肇一教授

自己組織化現象、機械学習、コンピュータシミュレーションなど応用数学に関連した研究をしています。

菊池 万里教授

Lorentz空間などに代表される再配列不変空間におけるマルチンゲールの理論を研究しています。

古田 高士教授

多様体上の幾何学、特に等質空間などを研究しています。

永井 節夫教授

空間の中に、どのような曲面がどのように入っているかを微分積分学を用いて調べる、部分多様体論という分野の研究をしています。

藤田 景子教授

解析汎関数論、解析関数の積分公式とその応用について研究しています。

藤田 安啓教授

Hamilton-Jacobi方程式と病的函数の間の対応構造について研究しています。

山根 宏之教授

スーパーリー代数や量子群をコクセター半群の理論を整備しながら研究しています。

佐藤 勝彦特命教授

数学(数理モデル)を用いて、多細胞生物の体のできる仕組み(形態形成)、細胞運動、走性の仕組みを解き明かす研究を行っています。

秋山 正和准教授

数学を用いて、生物学、医学、脳科学、物質科学を橋渡しするような融合研究を目指します。

川部 達哉准教授

多様体への不連続な群作用や、それらの空間形の幾何学について研究しています。

木村 巌准教授

代数体の岩澤理論、有限体上の代数関数体の数論、および計算機数論を研究しています。

出口 英生准教授

コロンボの一般関数の理論を用いた偏微分方程式の研究を行っています。

宇田 智紀特命講師

応用数学・データ科学.特に位相的データ解析(流線トポロジー解析),数値解析,最適輸送等

幸山 直人助教

計算機と保型形式論を用いた符号理論及び格子理論の数理構造を研究しています。

清水 雄貴助教

多様体上の流体力学について,形を見れば,流れがわかるようになるために研究しています.

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