日米のライバルグループが協力してニュートリノ研究を推進

2025年10月24日

発表の概要

 日本のT2K実験と米国のNOvA実験は、データ統合を含む共同解析を実施し、その最初の結果を科学誌Natureに発表しました。両者はいずれも加速器を用いる長基線ニュートリノ振動実験です。この2つの実験が、異なる基線長(ニュートリノの飛行距離)やエネルギー条件を活かした共同解析を実施し、ニュートリノ振動の精密測定を行いました。その結果、ニュートリノの質量の二乗差に関する不確かさを2%未満に縮小することに成功しました。また、3種類のニュートリノの質量順序はまだ不明であるものの、その順序によっては粒子・反粒子間の対称性であるCP対称性の破れの大きさに大きな制限がかかることがわかりました。今回の成果は、ニュートリノのCP対称性の破れや宇宙における物質・反物質非対称の起源を解明する上で重要な一歩となります。今回の共同解析は、2010年から10年間のT2Kデータと、2014年から6年間のNOvAデータを統合したもので、競合しながらも補完し合う2つの国際共同実験の協力体制を示す成果でもあります。
 T2K実験国際共同研究グループは、世界15の国・国際機関にある76の研究機関から、約560人の研究者が参加する国際共同研究グループです。日本からは、大阪公立大学・岡山大学・京都大学・慶應義塾大学・高エネルギー加速器研究機構・神戸大学・総合研究大学院大学・東京科学大学・東京都立大学・東京大学・東京大学宇宙線研究所・東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構・東京理科大学・東北大学・富山大学・宮城教育大学・横浜国立大学の研究者と大学院生総勢約130名が参加しています。
 NOvA 実験国際共同研究グループは、世界8か国49機関から250人以上の研究者が参加しています。

タイトル Joint neutrino oscillation analysis of data from the T2K and NOvA experiments
著者 S.Abubakar et al. (NOvA and T2K collaboration)
掲載雑誌 Nature 646, 818–824 (2025), October 23, 2025
DOI https://doi.org/10.1038/s41586-025-09599-3

正式なプレスリリースのURL

連絡先

富山大学理学部 物理学プログラム 助教 中野佑樹
(ynakano--at--sci.u-toyama.ac.jp)

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