循環小数の一性質 -Midy の定理とその一般化-

【数学科】濱名 正道

 有理数1/7 は, 10 進法では, 次のように循環小数で表されます:

この右辺で周期的に繰り返して現れる142857 の形の数の列を循環節と呼びますが, この循環節を142, 857あるいは14, 28, 57 のように分割して加えると次のようになります:

142 + 857 = 999,   (1)
14 + 28 + 57 = 99.  (2)

つまり, 数字の列142857 を同数ずつそれぞれ2 個142, 857 及び3 個14, 28, 57 に分割し, 加えたものが9 をいくつか並べた数になります. ここで, 足し算は, 上記の数の列を10 進法で表示された自然数と見なして行っています.

 1/7 以外の, いくつかの有理数の小数展開についても調べてみます. 尚, 以下では, 循環節をbar  ̄を用いて,

のように表すことにします.

 これらの性質は, もっと一般の有理数の小数表示について成り立つ性質です. 1/p (p は素数) が, (1) の形の性質をもつこと, 即ち,

のように循環節の長さが偶数のとき, 循環節 a1a2 . . . akak+1ak+2 . . . a2k

a1a2 . . . ak, ak+1ak+2 . . . a2k

と二つに分割するならば,

a1 + ak+1 = 9, a2 + ak+2 = 9, . . . , ak + a2k = 9   (3)

であることは, 古くから知られている結果で, Midy の定理(Midy 1836) と呼ばれます. しかし, (2) の形の性質(長さが3 の倍数である循環節を3 個に分割する場合, あるいは, もっと一般に, 長さがd 2 の倍数である循環節をd 個に分割する場合) が, ある程度一般の有理数に対して成り立つことが示されたのは, 比較的最近で, 2004 年のGinsberg の論文(Ginsberg 2004) の発表以降です. ここでは, このような循環小数の性質を, 主に, Lewittes 2007 に従って紹介します.

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