電気化学-局在表面プラズモン共鳴を利用したニードル型光ファイバーセンサーの開発

2021年9月22日(水)~24日(金) にオンライン開催された日本分析化学会第70年会において、発表数974件の中から、理工学教育部 生物圏環境科学専攻 修士課程の松浦 匠真さんが若手ポスター発表賞を受賞しました。

受賞者

松浦 匠真さん(理工学教育部修士課程生物圏環境科学専攻(環境化学計測1研究室) 2年)

学会名

日本分析化学会第70年会

題目

電気化学-局在表面プラズモン共鳴を利用したニードル型光ファイバーセンサーの開発

研究業績成果の概要

光ファイバーは,光導波路となる高屈折率のコアの周囲を低屈折率のクラッドで被覆する事で,光情報を遠方に伝播します。その為,情報通信分野を中心に多くの分野で必要不可欠な存在となっています。一方,光ファイバーセンサーではその取り扱いの容易さや比較的安価である事から,バイオ・ケミカルセンサーとして様々な分析分野への応用が進んでいます。我々の研究室では,光ファイバーのクラッドを部分的に取除き,コアを露出させたことで全反射減衰法により外部の光学的情報を取得します。
 現在,私は水環境の保全を目的とし,この光ファイバーセンサーを用いた次の2テーマで修士研究活動に取り組んでいます。

1. 地熱水中におけるスケール生成のリアルタイムモニタリング光ファイバーセンサーの開発

以前にご紹介したスケールセンサー(トピックス:平成28年9月掲載)を改良し,地熱発電所等の現場で使用しやすい汎用性の高いポータブルタイプのセンサーを開発し,その性能評価を実験室,及び,現場(野外)で実施しています(図1)。

図1
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図1. 長野県松代温泉(左)北海道利尻ふれあい温泉(右)での
スケールセンサー評価試験の様子(撮影:倉光先生)
2. 電気化学-局在表面プラズモン共鳴(LSPR)を利用したニードル型光ファイバーセンサーの開発(日本分析化学会第70年会 若手ポスター賞受賞テーマ)

LSPRとは貴金属ナノ粒子に光が入射する事で,ナノ粒子上に存在する自由電子が 集団的に振動し,それに由来して特定の波長帯において光の共鳴が得られる現象です。実は,LSPRは古くからステンドガラスや切子の着色などに利用されているとても馴染み深い現象です(図2)。

図2
図2. 金ナノ粒子を修飾する事で赤色に呈する光ファイバーセンサー

本研究室で開発した,電気化学-LSPR光ファイバーセンサーは,LSPRの高感度屈折率検出能に電気化学的な反応による選択性を付与した新規分析技術として,環境,医療,工業などの様々な分野への導入が期待できると考えています。

 今回,私は操作性の向上を目標にセンシング部端面に反射材を修飾した二―ドル型センサーへの応用,及び,より屈折率変化に鋭敏なロッド状の金ナノ粒子を修飾したセンサーの高感度化に試みました。作製したセンサーを用いて異なる溶液中での電位掃引に伴うLSPRピーク電位を評価したところ,サンプルの屈折率に応じたシフトを確認する事ができました。今後,今回新たに開発した本センサーの実用化に挑戦していきたいです。

図4
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図3. 研究室内での実験風景(左)とディスカッション中の様子

研究者コメント

 この度は,日本分析化学会主催の全国大会である第70回年会において若手ポスター賞を受賞することができ,非常に嬉しく思っています。また,常に研究活動を支えてくださっている倉光先生をはじめとするラボメンバーに感謝したいと思います。コロナウィルス感染拡大防止措置の為,オンラインでの開催となり普段とは違う緊張感がありましたが,これまで研究室内のゼミ等を通して磨いてきたプレゼンの能力も発揮できたのではないかと感じています。今後,より一層研究活動に尽力し,世界中の水質保全に役立つセンサー開発に努めていきたいです。

 最後に少しでもこれら研究テーマに興味を持って頂けましたら,ぜひ我々と共に楽しい研究ライフを送りましょう!

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