生物学科セミナーのお知らせ 開催日:令和4年7月4日(月)

2022年6月30日

生物学科セミナーを開催いたします。ご興味のある方は、是非ご参加ください。

生物学科セミナー

演 題 植物の葉・花器官形態を制御するE3ユビキチンリガーゼを軸としたシグナル経路同定に向けて
講 師 別所-上原 奏子 博士(東北大学 生命科学研究科 進化ゲノミクス分野・助教)
日 時 2022年7月4日(月)16:30~(1-1.5時間程度)
会 場 理学部 A424講義室
要旨 人為選択に基づく作物の栽培化は、農業上多数の有用な形質の作出に貢献してきた。芒(のぎ)は、イネ科植物の種子先端に見られる突起状の構造物で、動物の毛や衣服に付着し種子散布に役立つほか、草食動物による捕食から種子を保護する役割を持つ。しかし、この形質は収穫時や貯蔵時の妨げとなるため、イネ栽培化の過程で喪失する方に選抜され、現在の栽培イネの多くは芒を失っている。イネはアジアとアフリカの二ヶ所で独立に栽培化され、アジアイネの芒消失に関してはこれまでにAn-1/RAE1およびRAE2の2つの遺伝子が選抜されてきたことが明らかとなった。一方で、アフリカイネにおける芒の消失に関しては、原因遺伝子はわかっていなかった。本研究では、アフリカイネで選抜されたRAE3遺伝子を同定し、その機能解析を行った。RAE3はE3 ubiquitin ligaseをコードしており、細胞膜上に局在すること、また幼穂で高発現していることが明らかとなった。またアフリカの栽培イネO. glaberrimaでのみストップコドンを含む欠失が起き、フレームシフトを起こしていることが原因変異であることがわかった。RAE3の変異はO. glaberrimaで特異的に起きており、他の野生イネやアジアの栽培イネO.sativaでは検出されなかった。これらの結果は、アジアとアフリカで異なる遺伝子が選抜され、芒の消失という共通の形質が選抜されたことを示している。本発表は、芒形成における分子機構の一端を明らかにし、イネの独立した栽培化について新たな視点を提供できるものと考える。またシロイヌナズナにおけるRAE3オーソログ、ATL43に対して近接タンパク質同定法TurboIDを用いてその相互作用因子探索を行い、複数の相互作用因子候補を同定した。これらの解析を通じて、E3ユビキチンリガーゼを軸とした植物の形態形成制御のシグナル経路について考察を行う。

お問い合わせ先:生物学科 土`田 努
e-mail:tsuchida(@)sci.u-toyama.ac.jp(メール送付の際には(@)を@としてください)

 
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