地熱で富山を暖かく:①高温〜中温地熱資源利用

【生物圏環境科学科】上田 晃

 富山の冬は寒い日が多く雪も降るため、部屋の暖房をし、道路の融雪や屋根の雪降しをする必要があります。このため、現在は灯油や天然ガスを燃やして部屋の暖を取り、道路には地下水を散水して融雪をしています。

 図1は、地熱資源分布を示したものです。富山県は、国内でも2番目に地熱資源に恵まれた県で、特に東部地域では、高温地域(200〜300℃)が存在し、この資源を使って地熱発電を行うえば、約200万kWの発電が可能で、県民が消費する電力の全てを賄うことが可能と推定されています。また、中部〜西部の地域でも、黄色で示した中温度域(50〜150℃)が分布しています。

図1
図1 富山県の地熱資源(赤色:高温地熱域、黄色:中温地熱域)

  我々の研究室では、この豊富な地熱資源を使って、CO2を排出しない豊かな生活ができるようにするため、地熱資源がどこにどれくらい存在するのか、どのように利用すれば生活を豊かにできるのかを研究しています。そのための研究方法としては、温泉の化学成分分析や土壌ガス分析、衛星画像を用いた温度分布解析などを行っています。

 富山県東部の地熱有望地域は、ほとんどの地域が国立公園に指定されていて、開発できなかったのですが、現在では第2種と第3種の地域について資源を利用することが可能になってきました。最近になって、産官学が共同で、富山県内で実際にどれくらいの地熱資源が利用できるのかの調査を開始したばかりです。富山大学では、富山県内での地熱発電、温泉発電、熱水利用に適した地域の選定と利用方法について、経済性や環境を考慮して検討しています。図2は、富山県と同様に地熱資源に恵まれたアイスランドの首都レイキャビック市の丘にある熱水供給タンク(熱水タンクの上は、回転レストランになっている)と家庭の様子です。ここでは、30km離れた高温地熱域で地下水に高温蒸気を添加して温水を造成し、熱水配管を通して1時間以内でレイキャビックまで湯送しています。その温水を家庭に送って、床暖房、室内暖房、給湯を行っています。富山県では、東部地域で温水を造成し、40km湯送して市内各地での熱利用ができればと期待しています。

図2
レイキャビクの丘に立つ熱水供給タン
図3
90%の家庭に給湯され、暖房されている

19 (Reykjavik Energy社出版のGeothermal utilistasion in Iceland, 42p. による)
図2 アイスランド国での地熱利用

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