雪結晶の形

【地球科学科】島田 亙

 今年も冬がやってきて、富山では週に一度は雪が降っています。
 さて、みなさんは降ってきた雪の結晶をじっくりと見たことがありますか? 富山の市街地ではなかなか難しいのですが、近郊の山やスキー場に出かけると気温が低いため、雪結晶の観察ができます。

写真1
写真1 雪結晶の集合体
写真1
写真2 角板結晶

 富山で降ってくる雪で最も多いのは“雪片(せっぺん)”と呼ばれる雪結晶の集合体です。通称では“ぼたん雪”とも呼ばれています。写真1は数個の結晶の集合体ですが、ときには数百個以上の集合体にもなります。雪片は白く見えますが、これは多くの結晶によって光が乱反射されるためで、一つ一つの結晶は透明です。
 写真2は、角板(かくばん)結晶と呼ばれ、六角形の板のような形をしています。雪も氷の結晶ですから、六方晶系と呼ばれる結晶構造を持っています。そのため、このような六回対称性を持っているのです。

写真3
写真3 扇型結晶
写真4
写真4 樹枝状結晶

 写真3は、中央の六角板の角から扇(おうぎ)状の枝が6本成長した結晶です。
 写真4は、樹枝状(じゅしじょう)結晶と呼ばれ、木の枝のように複雑に枝分かれしているのが特徴です。規則正しく枝が並んでいて美しく見えますが、このような枝分かれがなぜ発生するのか、どのような条件で枝分かれするのか、間隔はどのように決まるのか、といった結晶成長のメカニズムについては、まだ良くわかっていません。このように、身近な雪結晶にも、まだ不明な点が多く残っており、研究を進めています。

 一方、降ってきたときから真っ白な粒状の雪もあります。これは“あられ”と呼ばれ、上空で成長した六角板や樹枝状の結晶が落下してくるときに、下層の過冷却した雲の中を通過し、雲粒(水滴)が凍りついたものです。表面に氷の粒があるため、光が乱反射されて白く見えます。下層にどの程度の雲があるかということによって雲粒の付き方は異なりますから、写真5のように少しだけ雲粒がついたものから、何万個という雲粒がついて、まん丸に近くなるものまで千差万別です。しかし、まん丸に見える“あられ”も、転がしながらよく観察すると、ある方向からは元の六角形の面影が残っている場合もあります。

写真5
写真5 雲粒付き樹枝状結晶

 雪国で生活する人間にとって、雪は邪魔者扱いされがちですが、ときには虫眼鏡でじっくり観察してみてはいかがでしょうか。

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