立山・室堂平積雪調査について

【地球科学科】島田 亙、青木 一真

 2011年4月16日〜18日、立山・室堂平において積雪調査を実施しました。今年の積雪深は6m46cmで、理学部・地球科学科を中心に、理学部・生物圏環境科学科のほか、国内12の大学・研究機関(下記参照)が参加し、サンプリングを行いました。

 立山・室堂平は、立山黒部アルペンルート開通以来、北アルプスの北西側の登山拠点となっており、標高は2450mありますが、富山市内から約2時間半でアクセスできるのが特徴です。

 積雪調査では、幅8mの垂直断面を掘り出し(写真1)、積雪層の調査を行ったあと、サンプリングを行います。ただし、積雪深が6mを超え、さらに非常に堅い雪ですので、断面の掘り出しだけで1日半はかかります。

 なぜ室堂平で調査を行うのでしょうか?ここでは11月初旬からの降雪が、気温が低いために“ほとんど融けずに”積もっています。このため、降雪と共に、あるいは降雪と降雪の間に飛来したさまざまな物質(大陸起源の黄砂等)がそのまま保存されています。したがって、積雪を分析することにより、いつ・どのような物質が立山に運ばれてきたか?を調べることができるのです。また、標高が高く“周囲からの物質の流入がほとんどない”のも大きな利点です。

 今年の積雪の特徴は、12月から1月にかけて、冬型の気圧配置の結果と思われる堅い"しまり雪"の厚い層が存在することと、例年に比べて黄砂層が少なく、その黄砂も薄いことです。地球科学科では、3cmの厚さ毎に全層に恒るサンプリングを行いました(写真2)。これらのサンプリングから、室堂平に飛来したさまざまな物質を富山市科学博物館と共同で分析し、この冬の特徴を明らかにする予定です。これ以外にも各研究機関でサンプリングが行われており、今後さまざまな分析結果が発表されるでしょう。

 この室堂平での積雪調査は、1973年に川田邦夫先生(現 富山大学名誉教授)によって始められました。以来、地球科学科が中心となって、ほぼ毎年継続して実施してきました。当初は、積雪層の物理的な解析が中心でしたが、近年は各種化学成分の解析や、生物学的な解析も行われるようになってきました。単にサンプリングするだけではなく、室堂平の積雪の特徴を知って貰うため、今年も川田先生によるレクチャーが行われました(写真3)。

 人力だけで深さ6mを超える雪を掘る。一見、無謀にも思えるこの調査。あなたも参加してみませんか?

【立山・室堂平積雪調査参加大学・研究機関】

富山大学、富山県立大学、富山市科学博物館、立山カルデラ砂防博物館、金沢大学、金沢医科大学、石川県立大学、名古屋市科学館、国立極地研究所、海洋研究開発機構、九州大学、北海道大学

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写真1 積雪断面
今年の積雪深は6m46cm(4月17日)でした。
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写真2 サンプリング作業
厚さ3cm毎に100ccのサンプリングを行いました。
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写真3 川田名誉教授によるレクチャー
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