富山大学立山施設改修工事について

【地球科学科】島田 亙、青木 一真

 富山大学立山施設は、立山連峰の浄土山山頂近くの標高2839mにあります。老朽化により使用禁止になっていましたが、今年度、改修工事が行われました。今回はこの小屋の歴史と改修工事のようすをご紹介しましょう。

 この建物は、昭和18年(1943年)に旧日本軍によって、高山帯の高層気象観測を目的として建てられました。当時、立山黒部アルペンルートはなく、ほとんどの資材を芦峅寺から人力で運んだものと考えられます。戦後、運輸省、大蔵省の管理を経て、昭和26年(1951年)に富山大学に移管されました。当時は、周辺で一番大きな山小屋だったそうです。

 浄土山周辺は、中部山岳国立公園の特別保護地区で、鳥獣保護区の立山特別保護地区にも指定されています。また、立山連峰の主稜線上に位置し、西側には富山平野から富山湾、ユーラシア大陸方向に開けています。このため、大気、雪氷、地殻変動、動植物の生態など様々な研究活動に活用されてきました。また、学生の課外活動の場としても利用されてきました。

 しかし過酷な自然環境のため老朽化し、大規模な改修と観測櫓の移設なども行われましたが、建設後55年を経た平成20年(2008年)より小屋は使用禁止となりました。小屋は、北東側の柱が外れ、全体が波打つように変形していました(写真1)。

 これに対し、理学部等の教員やワンダーフォーゲル部OBから立山施設改修の要望が高まり、紆余曲折を経て、今年改修工事が行われました。小屋の規模・間取りは、以前と全く同じですが、傷みのひどかった基礎部分を全面的に改修するため、屋根部分をジャッキアップして仮設する工法が用いられました(写真2)。以前の小屋は基礎がなく岩の上に直接木材を載せただけでしたが、今回の改修では岩の上に形成済みのコンクリートで基礎が作られました。また、壁は地上でパネル化されたものを現地で組み立てるという工法が用いられています。工事は9月末の完成をめざして進められています(写真3、4)。

 日本国内にはかつて、気象庁・富士山山頂測候所や国立天文台乗鞍コロナ観測所など、高標高を利用した施設がいくつもありました。しかし、維持管理に経費がかかるためほとんどが閉鎖に追い込まれています。この様な状況の中で、富山大学立山施設は北アルプスの主稜線上にある唯一の観測拠点として、これからも教育・研究への活用が期待されています。

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写真1.2009年6月15日の立山施設
全体がうねるように変形してしまっている。
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写真2.2010年7月20日の立山施設
屋根をジャッキアップし、基礎から改修が行われた。
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写真3、4.2010年8月24日の立山施設
外壁・屋根はほぼ完成し、内装工事と櫓の補修・塗り替え工事が行われている。
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