教員と研究テーマ

玉置 大介 講師

植物細胞内外の現象を顕微鏡で捉える

主に光学顕微鏡を用いて植物細胞の細胞分裂や病害糸状菌に対する植物の防御応答について研究を行っています。

 玉置研究室では、主に光学顕微鏡を用いて、分子・細胞・器官の形を観察することで、植物の細胞分裂に必須な分裂準備帯(PPB)や紡錘体などの微小管構造体の形成の仕組みや、病原性糸状菌の侵入に対する植物の防御応答の仕組みを明らかにすることを目的に研究を行っています。加えて、国際宇宙ステーション(ISS)において、微小重力環境下で植物の細胞分裂を直接観察し、微小重力が植物の細胞分裂に与える影響を明らかにする宇宙実験を計画しています。

  • 核を蛍光タンパク質で可視化したタバコ培養細胞
  • 紡錘体内における微小管プラス端結合タンパク質EB1の局在
  • シロイヌナズナの葉の気孔
微小管を可視化したタバコ培養細胞の分裂準備帯像
(黄色:微小管(分裂準備帯),マゼンタ:核)
植物の細胞分裂を制御する微小管構造体の形成機構の解明

 植物の細胞分裂過程では,分裂準備帯,紡錘体,フラグモプラストなど,細胞骨格のひとつである微小管から作られる構造体が重要な役割を果たします.玉置研究室では,特に分裂準備帯と紡錘体に着目し,研究を進めています.

 分裂準備帯は植物細胞でしか見られない微小管構造体であり,将来の細胞分裂面(細胞質分裂時に細胞板が最終的に親細胞と融合する部位)を決定します.紡錘体は姉妹染色分体を娘細胞へ分配する役割をもっています.

 玉置研究室では,蛍光タンパク質で可視化した微小管や関連する分子の動態をライブイメージングにより解析することで,分裂準備帯と紡錘体の形成・成熟機構の分子メカニズムの解明を目指します.

コレオケーテ(Coleochaete scutata)の円盤状藻体像
重力環境が植物の細胞分裂に与える影響の解析

 月や火星などにおいて作物を生産するためには,重力が植物の形作りに与える影響を理解する必要があります.植物は細胞の伸長と分裂により形作られますが,宇宙の微小重力環境が植物の細胞分裂に与える影響については十分に理解されていません.

 玉置研究室では,緑藻植物コレオケーテとタバコ培養細胞を国際宇宙ステーション(ISS)へ打ち上げ,ISSの共焦点顕微鏡を用いて取得した画像データから,微小重力が植物細胞の細胞分裂に与える影響を明らかにする宇宙実験「Plant Cell Division」を計画しています.

 本研究の成果は,宇宙での作物栽培の基礎情報として必要不可欠であり,将来の月や火星における作物栽培への貢献が期待できます.

植物の葉内で伸展するムギ類赤かび病菌の菌糸を蛍光染色した像(緑色:菌糸,赤色:葉緑体の自家蛍光)
ムギ類赤かび病菌の侵入機構とそれに対する植物の侵入抵抗性機構の解明

 ムギ類赤かび病菌はオオムギなどの作物に感染し, 甚大な被害をもたらす植物病原糸状菌であり, この菌が産出するかび毒は人や家畜に健康被害をもたらすため世界的に問題になっています. ムギ類赤かび病菌は気孔や傷口を介して植物に侵入しますが, どのような仕組みで植物へ侵入するのか,それに対する植物の侵入抵抗性機構の詳細はわかっていません.

 玉置研究室では,主に顕微鏡観察と,感染葉から単離した表皮のプロテオーム・メタボローム解析から,ムギ類赤かび病菌の植物への侵入機構と,ムギ類赤かび病菌の侵入に対する植物の侵入抵抗性機構の分子メカニズムを明らかにするために研究を進めています. 本研究の成果から,ムギ類赤かび病菌に対する新たな防除技術の確立に繋がる知見が得られることが期待できます.

研究紹介動画

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