教員と研究テーマ

横畑 泰志 教授

哺乳類学、寄生蠕虫学、保全生物学

野生動物(モグラ類など)と、その体内に見られる寄生虫の生態や保全の研究をしています。

(左)ナホトカ号重油流出事故で死亡したウミウPhalacrocorax capillatusから検出された寄生線虫 Contracaecum rudolphii 
(右)富山市郊外で捕獲したアズマモグラMogera imaizumii
立体化画像で見る野生化ヤギCapra hircusによる魚釣島の植生の衰退(1978年:ヤギ導入直後の航空写真;2006年:導入28年後の衛星画像;小野貴司氏作製)
魚釣島固有種センカクモグラMogera uchidai(環境省により絶滅危惧IA類に指定)
実習風景(タヌキNyctereutes procyonoides礫死体の計測)

(1)食虫類を中心とする野生哺乳類の形態学、生態学、行動学:
近年はモグラ類の採餌行動と頭骨形態の関連、飼育下での人工坑道利用の種間差などに関する生態学的研究を行っている。

(2)野生動物に寄生する蠕虫類の形態分類学、群集生態学:
近年は、哺乳類の寄生蠕虫類の研究を行っており、外来リス類の寄生蠕虫感染状況の分析に力を入れている。

(3)上記に基づく自然環境、野生動物の保護・保全のための研究・活動:
近年は、尖閣諸島魚釣島の野生化ヤギ問題や福島県産モグラに対する放射性物質の影響に関する活動、新潟県産希少モグラ類の分布状況の把握に力を入れている。

研究紹介動画

  • 「モグラのミミズ摂食行動」(氷見光一氏撮影)

  • モグラ(動画はアズマモグラ)がミミズをトンネルの中で捉えて食べるときは、まず尾の部分を自切して他の部分に逃げられるのを防ぐために頭の部分から食べ始めます。次に頭から尾に向けてミミズの体を強くしごきながら食べ、腸管内の泥を後方に押しやって口に入るのを防ぎます。泥をミミズの肛門から出すのは難しいようで、途中で一度ミミズを放して尾の部分を探し(動画では少し時間がかかっています)、今度は尾の部分から前方へ向かってしごきながら食べるので、体内の泥はほとんどすべてミミズの断端から押し出されてしまいます。このように泥が口に入らないようにして食べていても、モグラを解剖すると胃の中からは多くの泥が出てくるので、非常に数多くのミミズを食べていることがわかります。

研究トピックス

「寄生虫にもレッドデータブックを」
‐その後‐

 2007年3月の理学部ホームページの研究トピックス欄で、「寄生虫にもレッドデータブックを」という記事を書かせていただきました。寄生生物は地球上の生物多様性の中でも非常に大きな割合を占めているので、それなりに大切にしなくてはいけなくて、せめて絶滅のおそれのある種はレッドデータブックに掲載しましょう、という内容でした。

それから7年後の昨年、10年に一度の環境省レッドデータブックの改訂があり、いくつかの寄生生物の掲載を提案したところ、3種が新たに掲載されました。ひとつはイトウナガクビムシ(写真上、中)で、北海道でよく「幻の大魚」といわれるイトウの口の部分に寄生している(写真下)節足動物です。淡水魚を水槽で飼っていると、稀に「イカリムシ」と呼ばれる寄生虫がついていることがありますが、それに近いもので、写真中の体から細く突き出た花のように見える器官をイトウの口の粘膜に引っ掛けて寄生しています。写真上で左右2つのソーセージをぶら下げたように見えるのは卵嚢で、多数の卵が入っています。イトウ以外の魚に寄生することは知られておらず、この宿主と同様、国内では数や分布域が減っていると考えられるので、絶滅危惧I類に指定されました。もう2つは、いずれもアマミノクロウサギに寄生し、その巣穴から発見されている2種のダニ類、ナカヤマタマツツガムシとクロウサギワルヒツツガムシです。いずれもこの宿主以外の動物やその巣穴からは発見されておらず、絶滅危惧I類に指定されました。

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横畑 泰志 教授

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