教員と研究テーマ

ニュートリノ天文学、宇宙線物理学、太陽物理学、極低放射能技術
岐阜県飛騨市で稼働しているSuper-Kamiokande検出器を用いて、ニュートリノ天文学、宇宙線物理学に関する研究を進めています。また、ニュートリノ観測を通して、太陽内部の核融合反応から太陽フレアまで太陽で発生する様々な物理現象を研究しています。これらの宇宙素粒子の実験的、観測的な研究と並行して、極低放射能に関する分析技術の開発、分析感度の発展を推進する研究を行っています。
詳しくは研究室のホームページをご覧下さい。
1. ニュートリノ天文学
岐阜県飛騨市で稼働しているSuper-Kamiokande実験の観測データを用いて、ニュートリノ天文学に関する研究を推進しています。これまでに、太陽ニュートリノ観測によってニュートリノ振動パラメーターを測定する研究、太陽ニュートリノ観測データから素粒子標準模型を超える新しい物理を探索する研究、重力波天体から放射されるニュートリノの探索する研究、太陽フレア由来のニュートリノを探索する研究、過去の超新星爆発から放出されたニュートリノを探索する研究などを実施してきました。近年は、天体の突発現象を多波長、複数の手法によって観測するMulti-messengerと呼ばれる研究領域で、ニュートリノを用いた研究を推進しています。また、2027年から稼働を予定しているHyper-Kamiokande検出器の実現に向けた基礎研究を行っています。


2. 宇宙線物理学
宇宙から飛来する一次宇宙線 (陽子やヘリウム)が成層圏の大気中の酸素や窒素と衝突することで、様々な種類の二次宇宙線が生成されます。二次宇宙線にはニュートリノやミューオンなどの素粒子が含まれますが、その生成数、粒子間の生成割合、エネルギー分布などは完全に理解することが難しく、大きな研究テーマです。私は地下環境のSuper-Kamiokande検出器で宇宙線ミューオン観測することで、宇宙線ミューオン内を生成する親粒子 (パイオンやケイオン)の割合を推定する研究、宇宙線ミューオンの電荷比を測定する研究、宇宙線ミューオンの偏極を測定する研究を行ってきました。また、宇宙線ミューオンの到来方向情報を用いて、一次宇宙線の異方性を明らかにし、一次宇宙線が宇宙空間でどのように伝搬しているかを明らかにする研究を推進しています。
3. 太陽物理学
太陽は地球から最も近い恒星であり、様々な観測手法により研究がなされてきた天体です。光学的な観測により太陽表面の元素組成や内部の密度、太陽フレアやコロナ質量放出などの突発的な天体現象などが調べられてきました。しかし、コロナ加熱問題、内部の元素組成、天体内部を伝搬する自身の振動現象、太陽フレアの発生機構など、複数の謎が未解明のままになっています。私はニュートリノ観測やシミュレーション開発を通して、これらの謎を明らかにする研究を推進しています。
4. 極低放射能技術
ニュートリノ観測、暗黒物質探索を目的とする検出器では、観測対象とする相互作用由来の信号と重複する形で放射線由来のバックグラウンド事象(背景事象)が観測されます。特に、宇宙線ミューオンを遮蔽するために地下環境での建設、稼働が必要になる検出器では、放射性物質の混入が主要なバックグラウンドになります。私はこれまでに、検出器の物理相互作用のターゲットとなる媒質中の放射性不純物の分析、検出器の構成部材に含まれる放射性不純物の分析、媒質の純化による放射性不純物の除去(吸着)部材の選定、などの極低放射能環境を実現する技術の基礎研究を推進してきました。現在は、さらなる技術開発を目指して、様々なアイディアを試しています。