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感光性有機固体の分子設計

【化学科】2020年12月

 光が当たることで性質が変わる物質は、光のもつ情報を保存したり、光によってきめ細かな細工をしたりするのに使えるので、私たちの便利な生活になくてはならないものです。実際に、写真や調光レンズ、記録用ディスクといった家庭にもあるものから、フォトレジストのような産業用途まで、社会の様々なところで感光性物質が活躍しています。私たちが最近報告した研究成果のひとつにも、光を感知して色が変わる含ホウ素イオン性有機固体の発見があります(参考文献)。ホウ素(元素記号B)を陽イオン部分の中心にもつ化合物1の固体に紫外線を当てると無色から赤色に変化すること、そしてその赤色になった固体を空気中に置いておくと時間が経つにつれて赤色が消えていくことを発見しました(図1, 2)。私たちは、ホウ素を中心にもつ陽イオンを使うことで新しい感光性化合物が作り出せると期待して、その分子構造と性質の関係に興味をもちました。

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図1. 含ホウ素イオン性有機化合物1の固体に紫外線(波長365 nm)を照射した前後の写真

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図2. ホウ素を陽イオン部分の中心に含むイオン性有機化合物1–3の構造式

 たとえば、私たちが新しく合成した化合物2と化合物3の構造式を見比べてください(図2)。どちらも同種同数の原子からなり、化合物1に酸素原子を含む5員環(フラン環)が付け加わった、よく似た構造をしています。では、違うところはどこでしょうか。フラン環のつながっている位置がずれています。たったこれだけの違いで、化合物の性質には大きな違いが顕れます。実際に、化合物2は、化合物1と同様にその固体に紫外線を当てると色が変わりますが、化合物3はその固体に紫外線を当てても色が全く変わりません。不思議だな、なぜだろう、と思いませんか。こういった、なぜだろう、と思う事象に日々出会えるので、化学の研究は面白いな、と思います。私たちは、このようななぜか、を明らかにするために、新しい化合物の分子設計、有機化学の反応を駆使した合成、化合物の構造や性質を明らかにするための様々な分析装置を用いた測定、および化合物の性質を量子化学の理論に基づいて理解するためのコンピュータを用いた計算、を組み合わせて研究しています。

【参考文献】

  1. Yoshino, J.; Hirono, Y.; Akahane, R.; Higuchi, H.; Hayashi, N. Photochem. Photobiol. Sci. 2020, 19, 1517–1521. (http://dx.doi.org/10.1039/d0pp00296h)
  2. Yoshino, J.; Sekikawa, T.; Hatta, N.; Hayashi, N.; Higuchi, H. Tetrahedron Lett. 2016, 57, 5489–5492. (http://dx.doi.org/10.1016/j.tetlet.2016.10.094)

(化学科 吉野 惇郎)