最終更新日:2005年8月10日.更新箇所.
http://www.math.toyama-u.ac.jp/SS2003/index.html
会場の茂庭荘への交通案内につきましては、仙台市勤労者保養所「茂庭荘」のweb pageの交通案内をご覧下さい.宮城交通バスの乗り場、時刻表などにつきましては、宮城交通のweb pageをご覧下さい.
8/18(月) | ||
14:00--14:30 | 参加受け付け | |
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15:00--18:20 | 1. イントロダクション(50分) 小松啓一 (早稲田大学) 2. $\Lambda$-加群の構造定理(80分)伊藤剛司(早稲田大学) 3. 岩澤類数公式(I) (40分)藤井俊(早稲田大学) | |
8/19(火) | ||
9:00--12:20 | 1. 岩澤類数公式 (II) (50分)藤井俊(早稲田大学) 2. アーベル体の解析的類数公式(70分)木村巌(富山大学) 3. Stickelberger元(I)(50分)山本現(早稲田大学) | |
14:00--18:20 | 4. Stickelberger元 (II)(50分)山本現(早稲田大学) 5. p-進L-函数の構成(100分)水沢靖(早稲田大学) 6. 岩澤によるp-進L-函数の構成の応用 (I) ---岩澤不変量の決定(60分) 福田隆(日本大学) | |
8/20(水) | ||
9:00--12:20 | 1. 岩澤によるp-進L-函数の構成の応用 (II) ---Ferrero-Washingtonの定理(90分)田谷久雄(東北大学) 2. p-進L-函数の円単数からの構成(90分) 都地崇恵(東海大学) | |
午後: | excursion | |
8/21(木) | ||
9:00--12:20 | 1. 函数体と代数体の類似(60分)八森祥隆(学習院大学) 2. 岩澤主予想(100分)尾崎学(島根大学) | |
14:00--18:20 | 3. 岩澤主予想のEuler系による証明(120分)青木美穂 (都立大学) 4. 岩澤主予想の保型形式による証明(120分) 栗原将人 (都立大学) | |
8/22(金) | ||
9:00--11:50 | 1. 岩澤理論の楕円曲線の数論への応用(90分)松野一夫 (都立大学) 2. 岩澤理論の拡張(60分)八森祥隆(学習院大学) | |
11:50--12:10 | 来年度の相談 |
上記の講演プログラム以外に、夕食後の時間を利用して希望者による気軽な形式の講演会を行ないます。数学の話題であれば分野を問わず、ご自身の研究発表、研究分野の紹介、問題提起など何でも結構です。excitingな時間となりますよう奮って御参加下さい。「宵の時間」世話係を広島国際大学の西来路文朗さんにお願い致しました。
「宵の時間」各講演のアブストラクトを掲載します.講演者の名前をクリックして、ダウンロードして下さい(dviファイル).
各講演の報告集原稿を掲載します.各アイコンをクリックして、ダウンロードして下さい.
8/18(月) | |
20:00--20:15 | 開多様体の$p$進Hodge理論、山下剛(東大・数理・D1)、報告集原稿、![]() ![]() |
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20:20--20:50 | GL(2)の表現のキリロフ型モデル、中村吉秀(阪大・理・D1)、報告集原稿、![]() |
21:00--21:15 | 非可換岩澤理論の高次$λ$-不変量について、岡野恵司(早大・理工・M2)、報告集原稿![]() |
21:20--21:50 | Zp拡大に対する形式群のノルムについて、栗谷剛志(都立大・理・D1), ![]() ![]() |
8/19(火) | |
20:10--20:25 | On the number of representations of 1 by a given binary form of low degree, 岡崎龍太郎(同志社大・工)、報告集原稿![]() ![]() |
20:30--21:00 | 代数的K理論について思ふ事、望月哲史(東大・数理・D4)、報告集原稿![]() |
21:10--21:40 | 基本群に付随するGalois 表現(入門まで)、角皆宏(上智大・理工)、報告集原稿![]() ![]() |
SS2003に参加する上で、事前に知っていた方が良いと思われる予備知識と、その参考文献をまとめてみましたのでご参考にして下さい(参考文献は多めに挙げておりますので、勿論全てに目を通す必要はありません)。
各講演の要旨末尾にあるアイコンをクリックすると、dviファイル、PDFファイルの形式で、報告集原稿がダウンロードできます.
報告集全部を一つにファイルにしたものは、こちら:(最終更新2004/May/20. 前の版との異同は、目次の頁の更新と、サマースクール会期中のプログラムの追加のみ.技術的な理由で、中村氏「GL(2)のキリロフ型モデル」が収録されておりません.問題が解決され次第、ファイルを置き換えます).
第10回整数論サマースクール報告集「概均質ベクトル空間」pp.286--291“岩澤理論の紹介”(八森祥隆氏)を参照.
報告集原稿,
ここでは、$\Lambda$加群についての解説を行う。
$Zp$拡大における各中間体のイデアル類群のシロー$p$部分群の(ノルム写像による)射影的極限によって定義される岩澤加群$X$には、ガロア群上の($Zp$係数の)群環の射影的極限である完備群環$Zp [[\Gamma]]$というものが作用している。
実はこの完備群環は1変数の冪級数環$\Lambda:=Zp [[T]]$と同型となっている。ゆえに、$X$を冪級数環$\Lambda$上の加群として考えることにより、見通しの良い議論を行うことができる。
本講演では、$\Lambda$上の有限生成加群に対する構造定理の証明の解説を行うことを目標とするが、後の講演において必要となる事柄についてもできるだけ詳しく述べる予定である。
報告集原稿,
この講演では岩澤類数公式の証明を行う。岩澤[I]はZp拡大K/kにおいて、各n-th layer knの類数のp-partの挙動を岩澤不変量と呼ばれる3つの整数を用いて記述した。普通にknを見ていても類数の規則性を見つける事はほぼ不可能だと思うので、Zp拡大を扱う強力さがよくわかる定理だと言える。
knのイデアル類群のSylow p部分群Anのノルム写像による射影極限XK(岩澤加群)には、Zp係数の一変数冪級数環(=Λ)が作用していることが分かっている。(伊藤氏の講演参照)類体論によってAnとXn(kn上最大不分岐アーベルp拡大のGalois群)がGal(kn/k)-加群として同型である事ことからXKとX(K上最大不分岐アーベルpro-p拡大のGalois群)がΛ加群として同型となる。各XnがXの商群として表現され、その核YnはΛの作用を用いた具体的な記述を持つ。そのことからXが有限生成torsionΛ加群である、というところまでを前半で話す。
後半は、Xが有限生成torsionΛ加群である事から、有限生成elementary tosionΛ加群Eへのpseudo-isomorphismが存在し、Eの方でまずのAn=Xn=X/Ynに対応する位数の挙動を計算して、pseudo-isomorphismによるずれを評価する事により岩澤類数公式が導かれる事を示す。その後、証明中からの直接の系をいくつか示して、最後に岩澤不変量に関する予想の紹介をしたい。
報告集原稿,
この講演では、有限次Abel体の解析的類数公式について解説する.
一般の有限次代数体について、そのDedekind zeta関数のs=1での留数に、類数、単数基準などの数論的な量が現れる.一方、有限次Abel体については、Dedekind zeta関数が、Abel体に対応するDirichlet指標に関するDirichlet L関数の積に分解するという著しい事実がある(類体論のプロトタイプ).
また、DirichletのL関数の整数点での値は、一般化Bernoulli数により表すことが出来る(特別な場合として、Riemann zeta関数の整数点での値は、Bernoulli数により表される).
これらのことから、虚Abel体の類数のマイナス部分(類群のマイナス部分の位数)を、一般化Bernoulli数の積として明示的に書くことができる事、また、実Abel体の類数については(講演で述べるのはp冪分体の場合)、類数を全単数群の中での円単数群の指数として書くことができる事、を解説する.
Abel体のDedekind zeta関数がDirichlet L関数の積に分解するという事実は、Abel体のイデアル類群や単数群などを対象とする考察を、Dirichlet指標χに関する「χ部分」に精密化する事が出来るのではないか、という示唆を与える.それがどのように実現されるかについては、引き続く講演で解説される.
報告集原稿,
この講演では,Stickelbergerイデアルの元はイデアル類群を零化するというStickelbergerの定理,およびそれに関するいくつかの話題を解説する.ここで講演される内容は主に,後に行われる水沢氏の講演における$p$進L関数の構成,青木氏のGauss和のEuler systemの議論に必要とされる.
(I) (50分)
Stickelbergerの定理・適用例の解説および証明を行う.なお時間の都合上講演では円分体の場合に限定して証明を行う.
アーベル体$M$に対してそのStickelberger元を定義する.これは部分ζ関数と関わりを持った群環$Q[G] (G=Gal(M/Q))$上の元である.Stickelberger元を用いて$Z[G}$のStickelbergerイデアルを定義して,Stickelbergerの定理の主張を述べる.この定理は,実アーベル体の場合にはイデアル類群の情報を与えないが,例えば虚2次体の場合にはBernoulli数が関わるなどイデアル類群に良い情報を与えることを見る.次に,Stickelbergerの定理の準備をしてGauss和の素イデアルの分解の様子を調べる.ここでは,素イデアル分解に関する歴史的な背景 (Kummerの仕事等) にも触れたい.最後に,素イデアル分解の結果からStickelbergerの定理が示されることを説明する.
(II) (50分)
ここではStickelbergerの定理に関する話題:
Herbrand-Ribetの定理とStickelbergerイデアルの指数に関する岩澤氏の結果([2]参照)
について解説を行う.
まず,上に挙げた結果を述べるための準備として,$χ$-part, $±$-partの説明を行う.$χ$-partはp分体の場合,つまりTeichmuller指標のベキの場合について説明する.$±$-partについては一般の位数2の群が作用する$Zp$加群について述べる($p$は奇素数とする).特にCM体のイデアル類群の$+$-partと最大実部分体のそれとの関係についても説明する.
Stickelbergerの定理の系として得られる結果として,Herbrandの定理がある.これは円の$p$分体の類数の$p$部分とBernoulli数の$p$整除性に関するKummerの判定法の精密化である.Bernoulli数$B{p-i}$と一般Brenoulli数$B{1,ω}{-i}$の$p$整除性について述べた後,Herbrandの定理の主張を述べ,証明を行う.また逆 (Ribetの定理) も成立すること,さらに$vp(#A{ωi})=vp(B{1,ω{-i}})$が成立することを事実として述べる.(岩澤主予想との関係・証明等は尾崎氏・栗原氏の講演を参照)
最後に円の$p$ベキ分体において,Stickelbergerイデアルのマイナスパートの指数と類数が一致するという岩澤氏の結果の紹介を行う.時間があれば証明の概略も述べたい.
報告集原稿,
ゼータ関数の負整数点での値として現れるBernoulli数の間には、Kummer合同式と呼ばれる p-進的な合同関係がある。久保田-Leopoldt [KL] は、このようなゼータ関数( Dirichlet L-関数 )のp-進的側面を担う関数として、p-進L-関数を定義した。
これに関して岩澤 [Iwa] は、Stickelberger元を円分Zp-拡大の系列で考えることにより、岩澤冪級数と呼ばれるある$\Lambda$の元を構成し、これを基にp-進L-関数を"岩澤関数"( [NT3]参照 )として構成した。現在知られているp-進L-関数の構成法は様々であるが、この講演の目標は上記のStickelberger元による構成法を解説し、さらにこの構成法に基づいて p-進L-関数を考察することである。特に岩澤関数として構成されることから、Kummer合同式を導く。
またStickelberger元から構成されることに基づいて、p-分体における岩澤主予想の主張を考察する。解析的類数公式から見られるように、Dirichlet L-関数はBernoulli数、類数、単数群と深く関係している( 木村氏の講演参照 )。p-進L-関数が類数だけでなく、イデアル類群の構造とも深く関わってくることが、Stickelberger元から構成されること、およびStickelbergerの定理( 山本氏の講演参照 )から見てとれる。この関係を記述するのが岩澤主予想(の第1の定式化)であり、Herbrand-Ribetの定理、解析的類数公式等もふまえてその主張を考察し、以降の講演へと繋げたい。
報告集原稿,
報告集原稿,
代数体と関数体の類似の一つとして、代数体の円分Zp拡大体についてその岩澤μ不変量はゼロであろうと予想されている(岩澤の予想)。
この予想に関して、FerreroとWashington[FW]は、基礎体がアーベル体の場合には正しいということを証明した。これがFerrero-Washingtonの定理である。この定理の証明には、オリジナルのFerreroとWashingtonによるもの、Washington著のGTM83[W2]で採用しているOesterle[Oe]によるそれの簡易化、Sinnott[Si]によるΓ-変換を用いた新しいタイプのもの、さらに、Washington[W1]によるSinnottの証明の岩澤冪級数による書き換えなどがある。
この講演では、オリジナルのFerrero-Washingtonによる証明を、基礎体がp分体の場合について紹介する。また、この仕事の前になされたFerreroの仕事[Fe]についても言及する。
講演での話は時間の都合上、上の通りであるが、報告集ではその他のμ不変量に関する結果([Go],[Iw]など)やアプローチ方法([Si], [W1])などについても触れる予定である。
報告集原稿,
報告集原稿,
代数体と一変数代数函数体, 特に有限体上の函数体とは多くの類似点がある. 特に, イデアル類群の函数体における類似物は, 次数 0 の因子類群である. しかしながら, 函数体の理論にあって代数体にないものは次の事実であった:
(完全)体 $k$ 上の函数体は, $k$ 上射影非特異な代数曲線の函数体であり, そのヤコビ多様体の$k$-有理点が次数 0 の因子類群と同型になる.
この事実により, 代数幾何的手法によって因子類群の性質を明らかにすることが出来る.
岩澤は, 代数体の $Zp$-拡大体とその上のイデアル類群の構造の理論を建設していく中で, それが, 函数体において, ヤコビ多様体の類似物を考えていることに当たるということに気付いていったようである. ヤコビ多様体の理論によって因子類群の構造が簡単になるのが,代数閉体上の函数体の場合であることから, 代数体の $Zp$-拡大と函数体の代数閉体への係数拡大が類似していると考えたのである.
さて, 函数体における著しい結果は Weil による次の結果であり, これには (代数体にない) 曲線とヤコビ多様体の理論が必要であった:
"函数体の合同ゼータ関数(の主要部)は行列式表示をもつ"
これの代数体における類似物は何であろうか. 実はそれが岩澤主予想なのである.
本講演では Weilの結果を説明しながら, 岩澤主予想がどのようにその類似と考えられるかを説明する. また, 他の類似についても触れたい.
報告集原稿,
この講演では、まず岩澤主予想の3つの同値な定式化について解説する。$k/Q$を虚アーベル拡大、$k∞/k$を円分的$Zp$-拡大とする。
第1の定式化は岩澤加群(即ち$k∞$上の最大不分岐アーベル$p$-拡大のGalois群)のマイナス部分の$\Lambda:=Zp[[\Gal(k∞/k)]]$-加群構造が$p$-進$L$-函数と結びつくという形で成される。これをKummer dualityを用いて、$k∞$上の最大$p$-分岐(即ち、$p$上の素点以外は不分岐)アーベル$p$-拡大のGalois群のプラス部分の$\Lambda$-加群構造が$p$-進$L$-函数と結びつくという形に書き換える(第2の定式化)。さらに、半局所単数/円単数が$p$-進$L$-函数と結びつくという結果(都地氏の講演参照)を用いて、岩澤加群のプラス部分と(大域)単数/円単数の$\Lambda$-加群構造が結びつくという形に言い換える(第3の定式化).
次に、岩澤主予想から帰結されるいくつかの事実を紹介する。例えば$Q(μp)$のイデアル類群の$p$-part $A$について、$A$の$χ$-partの位数が$\# Aχ=p^vp(B{1,χ-1})}$ ($χ$は$\Gal(Q(μp)/Q)$の奇指標でTeichm\"{u}ller指標でないもの, $vp$は正規$p$-進付値)と表される。これはいわば$χ$-partごとの解析的類数公式であり、Herbrand-Ribetの定理(山本氏の講演参照)の精密化を与える。
最後に特殊な場合について岩澤主予想の証明を与える。例えば$k=Q(μp)$でVandiver予想($p$が$k$の最大実部分体の類数を割らない)が成立していてるときに岩澤主予想(実はもっと強い事実)が成立することを示す。
報告集原稿,
この講演では、岩澤主予想のEuler系による証明を定式化(I)、(III)(尾崎氏の講演参照)に対し独立に与える。簡単のため基礎体はp分体とし証明の全体を述べる事を目標とする。
前半(60分)
前半は、主にイデアル類群の"higher annihilator"と円単数、Gauss和のEulersystemから構成される"derivative class"の関係について述べる。詳細は以下のとおり。
後半(60分)
後半では、前半の結果を用いて岩澤主予想の証明を与える。始めに、解析的類数公式(木村氏の講演参照)を用いることで、岩澤主予想を示すには、片側の包含関係のみで十分なことについて説明する。 それから、良い素点を選ぶ為にEuler system の議論で良く用いられるChebotarevの定理の応用について述べる。残りの時間で、証明の詳細について述べたいと思う。
岩澤主予想は Mazur と Wiles によって、モジュラー曲線の Arithmetic を使って最初に証明された([1])。その後、Wiles は総実代数体上でも岩澤主予想を証明したが([3])、その方法は(p 進)保型形式についてのいくつかの基本的な性質を認めれば、わりあい近づきやすいものなので、[3] を中心にして岩澤主予想の証明について話す予定である。保型形式に伴う 2 次の Galois 表現が円分体の ideal 類群についての問題に使えること(2階から1階を見ること)は、Ribet が Herbrand の定理の逆(素数 p が Riemann zeta の負の奇数での値の分子を割れば、p 分体の ideal 類群の p 成分は 0 ではない)を証明することにより最初に示した([2])。Wiles の岩澤主予想の証明は、Ribet の定理の精密な一般化とみなせる。
この講演では、予備知識はまったく仮定せず、保型形式の定義から始めて、保型形式に伴う 2 次の表現、Hecke 環、Eisenstein ideal、いくつかの工夫(Fitting ideal など)、p 進保型形式、肥田理論などについて、岩澤主予想に使う範囲で、アイディアを中心として解説しようと思う。講演では、まず Ribet の定理を [2] よりやや精密な形で、[2] より簡潔に証明する。その一般化として岩澤主予想を [3] の方針を基本として証明する予定である。
報告集原稿,
代数体上の楕円曲線の数論に残された重要な未解決問題として、BirchとSwinnerton-Dyerの予想がある。この予想は、有理数体(またはより一般の有限次代数体)上定義された楕円曲線に付随して、代数的に定義される量(Mordell-Weil群の階数やTate-Shafarevich群の位数など)と解析的に定義される量(Hasse-WeilのL関数のs=1での零点の位数や特殊値など)との間に密接な関係があるとするものである。この予想はまだまだ未解決ではあるが、部分的な結果がいくつか知られており、更にそのうちの多くで岩澤理論的な手法や考え方が重要な役割を果たしている。
そこで本講演では、虚数乗法を持つ楕円曲線のBirch, Swinnerton-Dyer予想に関するCoates-Wilesの結果や、その拡張も与えるRubinによる虚2次体上の(1変数または2変数)岩澤主予想の証明とその応用の概略を中心に、虚数乗法を持たない場合の関連する結果の紹介も含めて、(拡張または一般化された)岩澤理論や岩澤主予想のBirch, Swinnerton-Dyer予想に対する応用について説明したい。
イデアル類群は, 大域体のガロアコホモロジーから局所体のガロアコホモロジーへの制限写像の核として定義される, "セルマー群" の一種であると考えられる. 一方, Birch Swinnerton-Dyer 予想や Bloch-Kato 予想等は, より一般のセルマー群と, 対応する $L$-関数の特殊値の間の関係を述べたものである. 従って, イデアル類群と L 関数の関係を記述する岩澤主予想は, そのような予想を攻略するよい雛型を与えているともいえる. そこで本講演では, まずセルマー群とは何か, どのようにイデアル類群の一般化であるかについて説明したい.
次に, $Zp$ 拡大を考えるということが, いわばガロア表現の"deformation (変形)" を考えていることにあたるということを説明する. 変形を考えることによってもともとの対象物のことがよく分かるという, しばしば数学に現れる文脈の中に岩澤理論もあるのであった. この方向への一般化として, (1)肥田理論との関係, (2)$p$ 進 Lie 拡大の岩澤理論, 等について触れる.
報告集原稿,
青木美穂(都立大学)、伊藤剛司(早稲田大学)、尾崎学(島根大学)
木村巌(富山大学)、栗原将人(都立大学)、小松啓一(早稲田大学)
田谷久雄(東北大学)、都地崇恵(東海大学)、八森祥隆(学習院大学)
福田隆(日本大学)、藤井俊(早稲田大学)、松野一夫(都立大学)
水沢靖(早稲田大学)、山本現(早稲田大学)
尾崎 学 (島根大学) ozaki@math.shimane-u.ac.jp
田谷 久雄 (東北大学) taya@math.is.tohoku.ac.jp
八森 祥隆 (学習院大学) yhachi@math.gakushuin.ac.jp
2004年度整数論サマースクール「基本群とGalois表現」.
2005年度(第13回)整数論サマースクール「Hilbert保型形式」.
web page作成・保守:木村巌(富山大)
$Id: ss2003.html,v 1.53 2005/08/10 07:17:20 iwao Exp $