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  富山大学 > 理学部・大学院理工学教育部理学領域 > トピックス > 2007年9月
トピックス
単細胞生物の行動の仕組みを解明する(生物圏環境科学科)
 高等学校の教科書にも良く登場する原生動物(原生生物)のゾウリムシは,皆さんご存じのように単細胞生物です。一つの細胞からなる生き物なのですが,多細胞動物と同じように,外界の環境変化(これを生物学では「刺激」と呼びます)に巧妙に反応していろいろな行動をすることにより生物圏の中で生き抜いてきました。単細胞生物は細胞としての反応と,個体としての反応を同時に観察することができるので研究材料として古くから利用されています。刺激に対して反応し行動をするには,刺激を受容する仕組みとその情報を処理して運動器官に伝え,運動の仕方を調節することが必要です。
 私たちは,この一連の反応の中で,外界の刺激の情報によってどのように運動が調節されているのか,その仕組みの解明を目指しています。原生生物の細胞は高等植物や動物の細胞と基本的に同じですから,生物全体で起こっているいろいろな細胞レベルの現象を解明するためのモデル系としても大きな意義があるわけです。
 単細胞生物の行動は泳ぐ速度と方向の変化によって調節されます。ゾウリムシの運動器官は繊毛と呼ばれる細長い細胞器官で,同じようなものはヒトの細胞にもあり,発生の調節や体内での輸送現象また精子の運動などに大切な働きをしています。ゾウリムシは,この繊毛の動きを調節することにより泳ぐ方向や速度を調節しています。
 単細胞のゾウリムシは,細胞としては巨大(長さが約0.2mm)で細胞表面を覆っている繊毛全体の運動を観察することは困難なのです。私たちは,この繊毛の動きを観察するのに最適な実験系である,ゾウリムシの「開き」を調製する技術を開発しました(右の写真とムービー)。この「開き」に生えた繊毛の運動はいろいろな化学物質を与えることにより人工的に操作することが出来,外界の刺激の情報がどのようにして繊毛の運動を調節しているのか直接繊毛運動を観察することにより調べることができます。
 右上のムービーは「開き」に生えた繊毛の運動を人工的に引き起こした例です。動いている縞模様は繊毛波と呼ばれる繊毛運動の位相のズレが伝わっていくことによって起こる現象です。また右下のムービーのように一本一本の繊毛の動きを観察することもできます。この「開き」を利用して,外界の刺激の情報がcAMPという情報伝達物質によって繊毛に伝えられ運動が調節される仕組みを解明しました。もう一つの重要な情報を伝達する役割を持つCa2+イオンによる分子レベルでの運動調節の仕組みの解明が現在なされつつあります。
 ゾウリムシを代表とする原生動物を研究材料にする研究者はそれほど多くはありませんが,日本の原生動物研究者が一堂に会する全国大会が本年11月16日(金)から18日(日)の3日間富山大学で開催されます。この学会ではゾウリムシの「刺激」受容の初期過程,特に化学受容(味覚)研究の第一人者Vermont大学のJudith Van Houten博士が特別講演されることになっています。大会のホームページは こちら です。
 「開き」の詳細については こちら をご覧ください。また,さらに興味をお持ちの方は私どもの ウェブサイト をご覧ください。

(生物圏環境科学科 野口 宗憲)




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Last modified 2007.08.31
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