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  富山大学 > 理学部・大学院理工学教育部理学領域 > トピックス > 2007年3月
トピックス
寄生虫にもレッドデータブックを(生物圏環境科学科)
 現在、世界各地や日本国内では数多くの生物が絶滅の危機に瀕しています。その中には社会的に大きな関心を呼ぶものがある反面、誰にも注目されることなくひっそりと姿を消しつつあるものも少なくありません。 特に他の生物の体内や体表に生息する寄生生物は、生物多様性の大きな部分を占めているにも関わらず(注1)、 専門家以外には、いや、多くの場合は専門家にさえも、他の生物に害を及ぼすだけの有害な存在としてのみ扱われているのが現状です。 しかし、寄生生物の中には特定の宿主にしか寄生しないものも多く、その宿主が絶滅の危機に瀕している場合には、寄生生物もまた絶滅の危機に瀕していると考えざるを得ません(注2)。生物圏環境科学科生物圏機能学講座「野生動物保全学研究室」では、モグラなどの哺乳類の生態研究に加えて、 こうした寄生生物の現状把握と保全のための研究を続けています。

注1.「地球は寄生生物の惑星」
 例えば、1種類の生物に平均して4種類の寄生生物が見られるとしましょう。これだけで、地球上の生物の5分の4が寄生生物であることになります。さらに、寄生生物に寄生する寄生生物(超寄生生物)もいるため、生物の大半は寄生生物であると考えられ、地球はまさに「寄生生物の惑星」なのです。

 図.ナホトカ号重油流出事故で死亡した絶滅危惧鳥類ウミスズメに寄生していた線虫類
 (上左)腸の中にいる回虫類の1種、コントラシーカム・ルドルフィ(シャーレの格子幅は1cm)
 (上右)コントラシーカム・ルドルフィの頭部拡大(黒線は長さ0.06mm)
 (下左と中央)筋胃の内壁に∞の字形で寄生している線虫、ステゴフォラス・ステルコラリィ(格子幅1cm)
 (下右)筋胃に寄生する線虫の一種、ストレプトカラ・クラシカウダの頭部拡大(黒線は長さ0.05mm )


 注2.その例として、当研究室の調査で次のようなものがリストアップされています。
寄生生物の名称(和名がない場合は学名)
知られている宿主 (( ) 内は現状) 寄生生物の現状
 ボツリオケファルス・アケイログナシィ  スワモロコ(絶滅亜種)  国内で絶滅の可能性あり
 パタギフェル・トキ  トキ(野生絶滅)   国内で絶滅の可能性高い
 トキウモウダニ  トキ(野生絶滅)   国内で恐らく絶滅
 ヘリグモノイデス・イケハライ   オキナワトゲネズミ(絶滅危惧IA類)  絶滅危惧IA類に相当
 マリトレーマ・カルディナエ  カタヤマガイ(絶滅危惧IA類)    絶滅危惧IA類に相当
 ウンシナリア・マヤ  イリオモテヤマネコ(絶滅危惧IB類)  絶滅危惧IB類に相当
 オベリスコイデス・ペンタラギィ   アマミノクロウサギ(絶滅危惧IB類)  絶滅危惧IB類に相当
 シンヒマントゥス・ニッポネンシス   クマタカ(絶滅危惧IB類)    絶滅危惧IB類に相当
 アンキトレーマ・サングイネウム  コウモリ3種(絶滅危惧IBまたはII 類)  絶滅危惧II 類に相当
 ライチョウコクシジウム  ライチョウ(絶滅危惧II 類)   絶滅危惧II 類に相当
 スピロクシス・ハンザキ  オオサンショウウオ(準絶滅危惧)  準絶滅危惧に相当

  詳しくは当研究室のホームページ(http://yokohata.sci.u-toyama.ac.jp)をご覧ください。

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Last modified 2007.2.28
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