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トピックス
立山積雪調査 〜一冬の歴史とロマンを追いかけて〜 (生物圏環境科学科)
・積雪調査とは
 立山・黒部アルペンルートの中で最も標高の高い室堂平(標高2450m)では、昭和四十八年に富山大学の川田邦夫先生(極東地域研究センター)が積雪調査を行って以来、富山大学をはじめ名古屋大学や立山カルデラ砂防博物館などいろいろな所の人達によって積雪調査が行われてきました。今年の4月18日〜4月20日にも、川田先生をリーダーに積雪調査が行われました。この調査には富山大学のほか、富山県立大学や金沢大学などからも参加者があり、地球科学科や生物圏環境科学科からも多くの学生が参加しました。今回は総勢約30人で、2日間かけて地面が出るまで雪を掘りました(写真1,写真2)。今年の積雪は6m60cmでした。室堂平のすぐ前の雪の大谷では高さ約20mもの雪の壁があり、その間をバスが通っている写真をよく目にしますが、そこは吹き溜まりという特別な場所で、室堂平では例年6〜7mくらいの積雪があります。


(写真1:掘り始め。スイスイ掘れます。)


(写真2:だんだんと掘りにくくなってきます。)

・積雪調査からわかること
 山岳域の雨や雪は、地下水や河川水の元になっています。この事から、山岳域の降水の化学的特徴を調べる事は、地下水や河川水など我々の生活に深く関わりのある水の起源を調べる時に、重要な手がかりを与えてくれます。日本海沿岸の各地には、北西季節風が強くなる冬季に、アジア大陸から色々な物質が日本海を越えて長距離輸送されてくる事が知られています。しかし山岳域の場合、気象的・地理的に厳しい環境のため、冬季の降水試料を採集する事は困難です。しかし幸いな事に、標高の高い山岳域では気温が低いために、春先の融雪期まで積雪はとける事なく、その中の化学成分も保存されます。そこで春先に一冬分の積雪を採集する事で、化学成分から一冬の歴史を読み取る事が出来ます。
 雪の壁を見てみると、雪の中にいくつもの層が見られます(写真3)。この中には、大陸から飛んできた黄砂が多く含まれる層や、氷板の層が見られます。氷板は雪が降った後に気温が上がって表層の雪が融け、それが再凍結する事によって形成されます。これらの黄砂層や氷板は各深度の雪がいつ降ったかを知る重要な手掛かりとなります。また積雪の層の中には、硫酸イオンや硝酸イオンなどの酸性降下物が多く含まれる層もあります。これらの酸性物質は人間活動によって生じたもので、酸性雪の原因となっていますが、国内だけでなくアジア大陸からも立山に飛来してきています。このようにして積雪を物理的・化学的に分析する事で、大陸からの物質の長距離輸送状況や大気の循環、温暖化などの環境変動を調べる事が出来ます。また、今年は黄砂層などの積雪中の微生物の調査なども進められています。(写真4)
 話は変わりますが、立山の浄土平(標高2830m)には富山大学の立山施設があります。そこの櫓(やぐら)の上には、雨量計や風向風速計などの観測機器があり、夏季には気象観測なども行っています(写真5)。山岳域の国立公園内にこのような施設を持っているのは富山大学だけで、標高2800mを超える山岳域に日帰りで調査に行けるというのも魅力の一つです(写真6)。この雄大な自然の中で一緒に研究をしてみませんか?

(生物圏環境科学科:上原 佳敏,佐竹 洋)

(写真3:雪の壁完成。雪が層状に積もっているのがわかります。)



(写真4:試料採取) (写真5:浄土平の富山大学立山施設とやぐら) (写真6:初夏、室堂平から雄山を望む)
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Last modified 2008.05.31
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