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  富山大学 > 理学部・大学院理工学教育部理学領域 > トピックス > 2008年7月
トピックス
 世界で1番のテラヘルツ光 (物理学科)
図1 テラヘルツ光分光計
最近、遠赤外光(テラヘルツ光)への関心が高まっている。 薬物の検出や生体物質の研究に広く応用できるからだ。一方で、遠赤外光を発生する技術はこれまで難しい技術のひとつで、なかなか良い光源が開発されていなかった。しかし、富山大学では15年程前から,周波数が0.3テラヘルツから6テラヘルツ(家庭用電子レンジの100-1000倍くらいの周波数)のきれいな光を発生できる装置を開発し、使用してきた。(図1)3テラヘルツをこえる周波数では、このような光源は富山にしかないといってもよい。
 原理は意外と単純で、炭酸ガスレーザーから出る2本の赤外線から遠赤外光を作る(図2)。2つのレーザー光をそれぞれ異なる周波数で発生させておいて、それらの差の周波数の光(これが遠赤外光となる)を発生させる。さらに遠赤外光の周波数を連続的に変えられるようにするため、マイクロ波の電波も加えている。この光をいろいろ調べたい試料にあてて、吸収スペクトルを測定する。試料としては、水やメタノール、アンモニアなど安定に存在する分子のこともあるし、放電によって瞬間的にできる不安定な分子などもある。放電ができるような試料容器や光源は、床からの振動をひろわないように空気ばねで浮いた大きな実験テーブルの上に載せている(写真)。 使っている装置のほとんどが手製や、大学の機械工作室で作っていただいたものだ。
図2 テラヘルツ光発生の原理

 測定対象とする物は、ありふれたものでも精度良い分光データの欠如している分子、あるいは、なかなか日常には存在しないめずらしい(しかし、宇宙では簡単に存在しているかもしれない)分子だ。
 たとえば、水の分子がどんな形をしているかは小学生でも知っているが、その水の分子がどのような速さで回転しているかを正確に知りたいといわれると、正確に計算できる理論もないし、その測定値もなかった。そこでわれわれは水の遠赤外スペクトルの測定を継続して行っている。分子のスペクトル線の周波数はテラヘルツ程度の高周波だが、それを10キロヘルツぐらいの精度で測定する。この測定の精度は、東京―富山間の距離を1mmの精度で測定するのに匹敵する。こうして、正確な周波数表を蓄積して、将来の理論の発展のための基礎固めをしているというわけだ。
図3 HeH+のスペクトル

 また、珍しい分子としての好例はHeH+というイオンだ。天文学者の周期律表というのを知っていますか? 一見すると、大きなHの文字と小さなHeの文字しか書いてない表だけれど、よく見ると他の元素は見えないくらい小さな文字で書かれていて,宇宙における元素の存在比を反映しているとのことだそうな。ここで注目すべきは、HeH+イオンは 宇宙空間にもっとも多量に存在する2つの元素,水素とヘリウムから成る最も簡単なイオンなのにもかかわらず,まだ宇宙空間では未発見ということだ。そこで我々は、宇宙での探査に備えてその回転スペクトル線を測定してみた(図3)。測定された周波数2.0101839 テラヘルツをもとに現在天文学者が宇宙空間でこのイオンを必死に探している。

記事:教授 松島 房和
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Last modified 2008.07.31
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