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富山の水循環から世界へ 〜気候変化が地下水・沿岸海域・海洋生態系へ与えるインパクト〜

【生物圏環境科学科】2018年6月

 私たちの生活に必要不可欠な水。富山県は,年間降水量が2,000 mmを超え,多くの河川が流れ,水資源が非常に豊富な地域です。研究面でみると, 富山県は標高3,000 m級の立山連邦から水深1,000 mの富山湾までの高低差4,000 mの環境が,わずか数十kmの間でコンパクトに展開する世界的にもユニークな地形を有します。この環境を最大限に活用して,水のインプットからアウトプットまでを考慮して,流域単位の水循環を統合的に研究ができる格好のフィールドなのです(下図)。

 

図1

 

 陸から海へ供給される水のアウトプットには,主に河川水と海底湧水があります。富山湾では,海底湧水の湧出量は河川流量の僅か数%〜13%と見積もられているのに対し,海底湧水が沿岸海域へ供給する栄養塩量は,河川水の最大で2倍もあることが算出されています。したがって,陸域から沿岸海域への水・物質供給を評価する上で,河川だけでなく海底湧水も考慮することが不可欠です。
 最新の研究では,富山県東部に位置する片貝川扇状地において,浅層地下水の地下水位が過去30年間で約2〜3割上昇し,この陸域の地下水と連動する海底湧水の湧出量も最大で3割増加することが明らかとなりました。この地下水の増加は,近年の冬季の降雨量増加が主な原因であると結論づけられました。地下へ浸透する降水の増加は,地下水の酸性化を進行させることが報告されており,田園部における施肥の人為的影響とあわせて探究する必要があります。酸性化によって地下水中のCO2濃度が増加するため,近年では地下水が海洋へのCO2放出源として注目されており,海洋酸性化を進行させる要因の一つになることが懸念されています。私たちの研究室では,この現象に注目し,降水量増加などの気候変化によって地下水量の変化が確認された場所では,水質がどのように変化しているのか,また沿岸海域へのCO2供給量の変化についても研究を進めています。これらを明らかにすることで,地球温暖化等の気候変動によって水循環における「どの要素が,どの程度変化したか」を明確にし,さらに地下水から海洋へのCO2供給を抑制するために有効な対策を提示することを目指しています。

 

図2

試料採取の様子(右:河川源流調査,中央:地下水調査,左:河川水調査)

 

(地球生命環境科学専攻・張研究室 博士課程1年 片境紗希)