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積雪表面の色彩を利用した火山ガスの影響評価

【生物圏環境科学科】2017年3月

 色彩色差計は,我々が感じている微妙な色の違い(色差)を数値として評価することが可能な測定器です。図1に示すように装置が小型であることから現場測定に適しており,様々な分野で用いられています。また,測定は迅速・簡便に行うことができ,標準光を目的試料に照明した際に生じる反射光を受光することで測色します。色の表現の仕方には様々な表色系がありますが,その中でも1976年に国際照明委員会で規格化されたL*a*b*表色系は,明るさの指標であるΔL*値,赤と緑の色彩を示すΔa*値,黄と青の色彩を示すΔb*値によって色を表現し,ヒトの感覚に近いことから最もポピュラーに用いられています(図1)。これまでに,我々の研究室では色彩色差計から得られるL*a*b*値を用いた,簡易的な環境分析手法の開発を行ってきました。

 

図1

図1 色彩色差計(コニカミノルタ,CR-400)とL*a*b*表色系

 

 活火山の一つである弥陀ヶ原火山(立山)は,私たち富山に住む者にとって身近な存在であり,毎年多くの登山者が訪れる観光地です。しかしながら,東日本大震災以降,火山ガス噴気活動の活発化が報告されており,火山ガス中毒の事故発生リスクの高まりが懸念されてきました。そして2016年以降,常時観測火山の一つとして気象庁による24時間体制の監視が行われています。また,火山ガスに含まれる有毒成分が原因と考えられる,高山植物の赤枯れが観察されており,生態系への影響も懸念されています。そのため,火山ガスの放出量や拡散をモニタリングすることは,防災・環境影響評価において重要となっています。

 

図2

図2 立山地獄谷でみられる積雪表面の着色と現地調査の様子

 

 我々の研究室では,立山地獄谷周辺で積雪期に火山ガスの影響と思われる積雪表面の着色が観察されていることに着目し,積雪表面の色彩および化学成分分析から,多雪山岳地における火山ガスの拡散および負荷を推定可能であるか試みています(図2)。積雪表面の色彩を分析した結果,Δa*値とΔb*値の間には負の相関がみられ,着色した積雪表面は緑,黄色の色彩が強くなっていることが明らかとなりました。また,Δb*値と積雪表面に析出した硫黄粒子量との間には良好な関係性が示されました。図3は積雪表面のΔb*値を地図上にプロットしたものです。調査結果から,ガス噴気地帯から東南側の窪地で着色が顕著であることが観察されました。これは,火山ガスが窪地に滞留しやすいことや,立山の地獄谷周辺では西風が卓越していることに関係しています。これらの結果から,積雪表面の色の濃淡から火山ガスに含まれる硫黄成分の拡散を評価可能であることが分かってきました。今後は本研究の結果を,小型無人機(ドローン)で撮影した空撮画像の解析に応用することで,より安全で広域的な火山ガス拡散の評価に繋げていきたいと考えています。

 

図3

図3 立山地獄谷周辺の積雪表面の着色状況(調査期間:2013~2015年,4月~7月)


(生物圏環境科学科 佐澤 和人)