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遠赤外光を使って

【物理学科】2016年5月

 物理学科のレーザー物理学講座では遠赤外光を使って分子のスペクトルを調べている。研究している分子は主として宇宙空間にも存在しているような分子(いわゆる星間分子)だ。

遠赤外とは

 光は電磁波という波であり、光の色は波がどれくらい速く振動しているか(周波数)と対応している。我々の目に見える光可視光より周波数の低い領域が赤外光と呼ばれ、その赤外光の中でも周波数の低い領域が遠赤外だ。遠赤外よりさらに周波数が低くなると電波になってしまう。

なぜ遠赤外光が必要なのか

 気体の分子は飛び回っているときに自身がくるくると回っていて、この回転により周波数の異なったいろいろな色の光を吸ったり吐いたりする。ある分子がどんな周波数の光を吸ったり吐いたりするのかを系統的に調べたものがスペクトルだ(回転スペクトル)。スペクトルは分子の種類が違うと異なり人間でいえば指紋のようなものだ。分子ごとにスペクトルがどんな周波数の光で構成されているかをあらかじめ実験室で調べておけば、宇宙から来る光のスペクトルを調べて宇宙にどんな分子があるかもわかるわけだ。そして、宇宙にある分子から来る光は電波や遠赤外光が主であるので、遠赤外で分子を調べる必要がある。

どうやって遠赤外光を作るのか

 分子のスペクトルの周波数を正確に測るには現代ではレーザー光を使うことが多い。ところがあいにく遠赤外の領域では良いレーザーがない。そこで、赤外の光を出す炭酸ガスレーザーを2本用意し、お互いに異なった周波数で光を出しておいて、2つの周波数の差の周波数をもった光を作る。こうして遠赤外光を発生させることができる(図)。さらに、スペクトルを調べるときは周波数を連続的に変えられる方が良いので炭酸ガスレーザーの他にマイクロ波(家庭では電子レンジの電波でおなじみ)も一緒に入れて、周波数が変えられるようにしている。実はこのように遠赤外の領域で広く周波数が自由に変えられるようにした装置は世界を見渡しても富山大学にしかない。というわけで、外国の研究室からも、これこれの分子のスペクトルを調べてほしいという依頼がよく来る。

どんな分子を測っているか

 宇宙には簡単な分子から複雑な分子まで様々な分子が存在するが、宇宙で分子がどのようにできてきたかを調べるためには、材料となる簡単な分子について、存在する場所や量を詳しく調べる必要がある。そのような分子は原子が2つとか3つとかで構成されていて、軽いものが多い。また、電気的に中性の分子のほかに+や-の電荷を持ったイオン状の分子であることも多い。これまで実験室で測ってきた分子には例えばLiH、KHのような2つの原子でできた中性の分子や、OH-、H2D+、HeH+などのイオン分子がある。身近な水分子H2Oもスペクトルが遠赤外にあって宇宙にある重要な分子だ。しかも水は、意外かもしれないが、よく知られた分子なのに理論計算でスペクトルを正確に計算することはなかなか難しい分子なので、実験室での測定が重要となる。
 イオン分子のなかのHeH+の測定は重要だ。宇宙の原子は大部分が水素でその次に多いのがヘリウムなのでこれらを材料にしたHeH+は宇宙のどこかにきっと存在するに違いない。しかしまだ見つかっていない。実験室で測った周波数を手がかりに、このイオンが宇宙で探索されている。


(物理学科 松島房和)