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ボーリングコア試料を用いた鉱床の古地磁気年代測定

【地球科学科】2016年2月

 およそあらゆる岩石は磁石の化石(残留磁化)となっています.一般的に,残留磁化は岩石が形成した時の外部磁場を反映しており,地球上ではその当時の地球の磁場(地磁気)に影響されます.従って,放射年代測定法等の手法で岩石の年代を求めることができれば,その岩石が形成した当時の地磁気の状態を復元することが可能となります.このように岩石や堆積物中の残留磁化を解析し,過去の地磁気の状態を研究する学問を古地磁気学といい,過去の地磁気の復元から地球内部のダイナミクス,大陸移動や構造運動,年代測定などに応用されます.
 古地磁気研究において重要な要素の一つに野外での試料採取があります.残留磁化は方向と強度によって示される三次元ベクトルです.残留磁化の方向の議論を行うためには,実験室で測定した岩石内の残留磁化方向が実際に岩石のあった露頭においてどのような方向を示すのか変換しなければなりません.この変換には野外で岩石試料を採取する際に特殊な方向付け作業を行う必要があるため,古地磁気研究では状態の良い露頭を見つけることが研究の第一歩となります.
 一方,古地磁気研究の対象としてボーリングコア試料もあります.ボーリングコア試料は,掘削の間にコアがちぎれて相互に回転することがあり,偏角(水平面内での真北からの角度)の利用が難しく,伏角(鉛直面内での水平面からの角度)だけとなることがあります.伏角だけでも様々な議論が可能ですが,古地磁気極移動曲線(APWP)を用いた年代推定法を適応することができません.適当な露頭がなくボーリングコアを利用したカナダのHowards Pass 亜鉛-鉛鉱床群(図1)を対象とした古地磁気研究では,特殊な方法で偏角と伏角を求め,古地磁気年代法を適応しました.


 

 

図1.Howards Pass鉱床地域

 

 

 Howards Pass鉱床群は,カナダのユーコン準州西端に位置している鉱床群で,世界最大の亜鉛鉱山の可能性を秘めており,開発が進められています.現場では,掘削調査が精力的に行われており,地中の鉱床体の位置や大きさ等が確度良く推定されています.

図2.北米大陸のAPWP (Besse & Courillot 2002)とHowards Pass鉱床から得た古地磁気極.得られた古地磁気年代 (170±9 Ma)は,母岩の堆積年代(シルル紀)と有意に異なる.

 

大規模なHowards Pass鉱床ですが,これまで確度の高い年代値は報告されていないため,鉱床の形成メカニズムは議論が続いています.Howards Pass鉱床の試料は,伏角しか利用できないボーリングコア試料でしたが,Cioppa et al. (2000)により提唱されたCore-magnetization-angle(CMA)法を適応することで,鉱床の持つ固有残留磁化方向を求めることに成功しました.CMA法は,同一構造の鉱床体に対し,異なる角度から採掘された三本以上のボーリングコアを利用し,半径90º-伏角の小円の交点から鉱床体の残留磁化方向を決定する手法です.CMA法により直接の試料採取ができない地中の鉱床体の残留磁化方向を求めたのは国内外で初めてのことです.この古地磁気年代測定法の結果から,少なくともHowards Pass鉱床の粗粒鉱石部はジュラ紀中期に形成したと考えられます(図2).直接の試料採取が著しく困難な開発途中の鉱床においても,ボーリングコアを用いることで確度の高い古地磁気研究が可能となるため,鉱床形成過程の解明に必要不可欠な年代推定を中心とした更なる研究が望まれます.

 

 

(地球科学科 川﨑 一雄)