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「寄生虫にもレッドデータブックを」その後

【生物圏環境科学科】2015年10月

 2007年3月のこのコーナーで、「寄生虫にもレッドデータブックを」という記事を書かせていただきました(http://www.sci.u-toyama.ac.jp/topics_old/topicsMar2007.html)。寄生生物は地球上の生物多様性の中でも非常に大きな割合を占めているので、それなりに大切にしなくてはいけなくて、せめて絶滅のおそれのある種はレッドデータブックに掲載しましょう、という内容でした。
 それから7年後の昨年、10年に一度の環境省レッドデータブックの改訂があり、いくつかの寄生生物の掲載を提案したところ、3種が新たに掲載されました。ひとつはイトウナガクビムシ(写真1、2)で、北海道でよく「幻の大魚」といわれるイトウの口の部分に寄生している節足動物です。淡水魚を水槽で飼っていると、稀に「イカリムシ」と呼ばれる寄生虫がついていることがありますが、それに近いもので、写真2の体から細く突き出た花のように見える器官をイトウの口の粘膜に引っ掛けて寄生しています。左右2つのソーセージをぶら下げたように見えるのは卵嚢で、多数の卵が入っています。イトウ以外の魚に寄生することは知られておらず、この宿主と同様、国内では数や分布域が減っていると考えられるので、絶滅危惧I類に指定されました。もう2つは、いずれもアマミノクロウサギに寄生し、その巣穴から発見されている2種のダニ類、ナカヤマタマツツガムシとクロウサギワルヒツツガムシです。いずれもこの宿主以外の動物やその巣穴からは発見されておらず、絶滅危惧I類に指定されました。
 絶滅のおそれの極めて高い哺乳類や魚類は絶滅危惧IA類、もう少し低いものは絶滅危惧IB類に指定され、イトウやアマミノクロウサギは絶滅危惧IB類に指定されています。このランクに指定されている動物には、他にクマタカ、イヌワシ、ライチョウなどがいます。節足動物などの無脊椎動物は正確な情報の少ない種が多いことから、絶滅危惧IA類とIB類をあわせて絶滅危惧I類として指定しているので、これら3種の寄生虫は絶滅危惧I類となりました。これまでにもトキ(野生絶滅)の羽毛に寄生するトキウモウダニが同じ野生絶滅に、カブトガニ(絶滅危惧I類)に寄生するカブトガニウズムシというプラナリアの仲間が同じ絶滅危惧I類に指定されていますが、いずれも自由生活性のダニやプラナリアを担当する委員が提案したもので、寄生生物の専門家が提案して指定に至ったのは、今回が初めてです。今のところ内部寄生虫の指定は難しく、特に当てはまる委員会のない原生動物などはどうしたらいいかわかりませんが、今後も引き続き情報収集や提案を進めていきたいと思います。

 

写真1.イトウの口の辺縁に寄生する
イトウナガクビムシ
写真2.イトウナガクビムシの雌成虫

 

(写真はいずれも「水産食品の寄生虫検索データベース」
(http://fishparasite.fs.a.u-tokyo.ac.jp/Salmincola/Salmincola.html)より転載)

 

(生物圏環境科学科 横畑泰志)