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燃料電池自動車に使う水素はどうやって作る?

【化学科】2015年9月

 水素を使った燃料電池自動車が市販されるなど,近年,化石燃料資源に替わるエネルギー資源として水素に関する話題が多く聞かれるようになってきました。水素は,酸素と反応して燃えると水になる性質があるため,環境に優しいエネルギー資源と言われています。 水素は宇宙で最も豊富にある元素で,質量では宇宙全体の約70%を占めています。一方,地球上では水素は単体ではほとんど存在せず,化合物として存在しています。最近身近になった水素ですが,工業的には従来から多岐にわたって使用されています。たとえば,原油に含まれる硫黄分の除去,アンモニア合成の原料,光ファイバー加工時の熱源,マーガリンなどの油脂硬化剤などの用途です。これらのために,現在水素は全世界で1年間に7000億m3以上生産されています。今後水素をエネルギー源として用いるためには,より多くの製造が必要となってくるでしょう。ところで,そもそも現在水素はどのようにして作られているのでしょうか?
 水素はさまざまな資源から製造することが可能ですが,現在では製鉄所やソーダ工業から副生する水素と,ニッケル触媒を用いた天然ガス(メタンが主成分)などの化石燃料の水蒸気リフォーミング反応(式1)によるものが主なものです。水蒸気リフォーミング反応では,次にシフト反応(式2)を行い,二酸化炭素などを分離することにより純粋な水素を得ています。

 


水素エネルギーの推進は2014年に策定されたエネルギー基本計画に定められた「エネルギーの安定供給,経済効率性の向上,環境への適合,安全性」にそっているものですが,現状では,水素の製造はほとんどが輸入の化石燃料に依存しているため,化石燃料の代替資源とはなっておらず,他の水素製造方法の開発が急務です。将来的には火力や再生エネルギーからの電力を用いた水の電気分解で製造すること(電力の安い海外で製造し,輸入することを含む)も想定されているようですが,本格的な水素社会の実現には光触媒による水からの水素の製造(現在は基礎研究段階)が必要でしょう。
 私たちは水素の製造を直接の目的とはしていませんが,上記の水蒸気リフォーミング反応に似たメタンの二酸化炭素リフォーミング反応(式3)の研究を行っています。これは,最近,じゃま者扱いされている二酸化炭素の有効利用をするための研究の一環です。

 


この反応は一酸化炭素と水素が1:1で生成するため,水素を分離して用いるよりも,混合気体を有機化合物の合成原料として用いる方が適しています。この反応にもニッケル触媒が用いられますが,反応中に触媒上に炭素が生成し触媒が劣化してしまうのが,実用化への障壁となっています。現在炭素が析出しない触媒についての研究を行っています。

 

 

参考文献
1. NEDO水素エネルギー白書(2015) 独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構
2. 水素の事典(2014) 水素エネルギー協会 朝倉書店
3. T. Osawa, Y. Nakai, A. Mouri, I-Yin S. Lee, Appl. Catal. A: Gen. 474 (2014) 100–106.


(化学科 大澤 力)