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重力波望遠鏡KAGRAの完成に向けて

【物理学科】2014年12月

 富山大学から車で約40分程の神岡の地下で巨大な重力波望遠鏡KAGRAの建設が始まっています。私たち人類は遥か昔から空を見上げ、星々の輝きから宇宙の姿を捉えようと試みて来ました。その試みは時代が進むにつれて様々な道具が開発されるたびに新しい宇宙の姿を私たちに見せてくれました。しかし今まで人類が開発した道具はどれも光(電磁波)を用いて宇宙を観測するもので、これらの道具では宇宙誕生から38万年後(宇宙の晴れあがり)以前の姿を捉えることはできません。何故ならば、誕生後38万年より前の宇宙には電子等が高密度に存在し、電磁波の伝播を阻害したからです。宇宙が冷却し、電子が陽子に捕えられると電磁波が直進できるようになり、宇宙は晴れあがりました。それ以前の宇宙の姿を捉える方法として期待されているのが重力波の観測です。

光学系の組み立て作業中の筆者

 そもそも重力波とは約100年前にアインシュタイン博士が一般相対性理論を用いて予言した物理現象で、質量のある物体の周りの空間が歪み、物体が運動するとそれが波動としてどんどん遠くまで伝わっていく現象のことです。重力波は物質との相互作用がほとんどなく、あらゆるものをほぼ完全に透過する性質をもつため、晴れあがり以前の高温で高密度な初期の宇宙からも重力波はやってきていると考えられています。まさに宇宙の産声が今も地球にやってきていると言えます。

 重力波は運動する物体の質量が重いほど、物体が早く動くほど、また観測点と物体までの距離が近いほど大きくなりますが、重力波による空間の歪みは極微小でこれまでに重力波の直接観測に成功した人はいません。例えば、およそ20Mパーセク(約6500万光年)離れたおとめ座銀河団で起こった連星中性子星の合体(太陽質量程度の2個の中性子星が互いの周りを回りながら重力波を放出してエネルギーを失い、最終的には衝突し合体する現象)によって放出された重力波が地球にやってきた際の空間の歪みは地球と太陽の距離(1.5×108km)に対してたったの水素原子一個分(1.0×10-10m)ほどだと言われています。

 KAGRAでは片腕が3kmのマイケルソン型干渉計 (2つに分けられた光が、直交する2本の腕を往復した後で重ね合わされ干渉する度合いを見る装置)を用いることでこの極微小な空間の歪みの観測を試みます。重力波が観測できる感度を達成するためには、このような長大な干渉計を用いて、さらに地面振動が微小な地下の岩盤上に建設し、重力波を検出する干渉鏡を低音に冷却することなどにより、様々な雑音(振動、熱雑音、光子の統計揺らぎ等)を量子論で記述される限界近くまで取り除く必要があります。

光学部品を一つ一つ慎重にテストをしている研究者

 私たちの研究室ではレーザー光の強度雑音を低減する研究や現場での実験装置の立上げなどKAGRA開発の一旦を担っています。右の写真は現地でKAGRAのレーザー光源などの光学系を組み立てている様子です。KAGRAでは東京大学宇宙線研究所(ICRR)、国立天文台(NAOJ) 、高エネルギー加速器研究機構(KEK)の他、海外も含めて様々な研究機関の研究者が集まっており、私もその一員としてKAGRAの立ち上げに携わっています。あなたも一緒に重力波の初観測への挑戦をしてみませんか?


(レーザー物理学研究室 修士課程1年 加川智大)