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植物でカドミウム汚染土壌を浄化する

【生物圏環境科学科】2014年9月

 カドミウムによる土壌の汚染は,深刻な環境問題を引き起こします。ここ富山県においても,神通川がカドミウムで汚染され,その流域の水田で穫れた米を食べ続けた人からイタイイタイ病が発生しました。また,土がいったんカドミウムで汚染されてしまうと自然回復はほとんど見込めません。したがって,農作地が汚染されてしまった場合,そこで作る農作物は長年にわたって汚染されることになります。土壌汚染が厄介なもう一つの理由は,その修復に莫大な費用がかかることです。富山県では,平成23年3月に農地復元事業が終了しましたが,407億円の費用がかかりました。また,海外での例を挙げると,1990年代,米国は汚染土壌の修復のため100億ドル以上を投資しています。また,21世紀には,全欧で1.33兆ドルを投資しなければならないと見積もられています(埼玉県環境科学国際センター報 第3号)。そこで土壌修復の安価な技術として,植物の吸収力を利用できないか,このような観点からの研究が多くの国でにわかに注目されています。
 植物の中には,カドミウムや鉛などの有害元素を高濃度に蓄積できるものが約400種類ほど報告されています。日本に自生しているカドミウム集積植物のひとつに,ヘビノネゴザというシダ植物があります(ヘビノネゴザについては,以前のトピックス記事をご参照下さいhttp://www.sci.u-toyama.ac.jp/topics_old/topicsMar2008.html)。鉱山地にしばしば群生しており,乾燥させた葉のカドミウム濃度を測ると多いもので200 mg/kg dwを超えるカドミウムが検出されます。これは,一般的な植物の100倍以上の含有量です。では,この植物を実際のカドミウム汚染土壌で育てたとき,どれほどの除染効果が見込めるのでしょうか。今回,カドミウム汚染土壌を入手する機会がありましたので,ポット栽培による実験を試みました(図)。大学の圃場で胞子から育てて3年目のヘビノネゴザを,約10 kgの汚染土壌に移植しました。移植前の葉におけるカドミウム濃度は,3.44 mg/kg dwであり,平均的な植物の値と比べて約2倍のカドミウムを含んでいました(表)。大学の圃場で育てた植物になぜカドミウムが含まれるのかと疑問に思われるかもしれませんが,どのような土にも自然由来の極少量のカドミウムが存在しています。しかしながら,多くの植物からはカドミウムを検出できないことを考えると,この値には驚きました。さて,カドミウム汚染土壌で育てたヘビノネゴザには,さぞかし多量のカドミウムが吸収されているのかと大変期待したのですが,結果は,2.09 mg/kg dwとなり,むしろ移植前より低くなっていました。どうしてでしょうか。一ヵ月という栽培期間が短かったのか,あるいは肥料を全く与えなかったのですが,与えた方が良かったのか。カドミウムの一部は,鉄の取込み経路を利用して吸収されるとの報告があります。今回の結果を見ると,カドミウム汚染土壌で育てたヘビノネゴザでは,鉄の濃度が異常に高くなっていました。したがって,汚染土壌に含まれていた高濃度の鉄がカドミウムの吸収を抑制したのかもしれません。
 東京電力の福島第一原子力発電所の事故により,多くの農作地が放射性セシウムで汚染されてしまいました。事故当初,ヒマワリを植えて放射能を除染しようという試みがなされましたが,残念ながら期待したような効果は得られなかったようです。この例でも分かりますが,植物による有害元素の除染技術は思ったほど単純ではないのかもしれません。地道に改良を重ねて行こうと思います。

 

図

 

 

表

(生物圏環境科学科 蒲池浩之)