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中緯度の気候にも影響を与える、MJOとよばれる低緯度域における雲の集団化

【地球科学科】2013年7月

 良く晴れた夏の日の午後には、図1のような積乱雲を良く目にします。こうした積乱雲は、大気下層が強く暖められることで発達します。赤道付近の低緯度では、太陽に対して垂直に近い角度で光を浴びるため、太陽光が斜めに入ってくる中・高緯度よりも、単位面積あたりの太陽エネルギーの量が大きくなります。そのため赤道付近では地表面が、より暖められることになり、積乱雲の発達に好条件となっています。
 中緯度で、雲が低気圧に伴い集団的に発生することがあるのは、日本に暮らす我々にとって常識的なことですが、低緯度域では温帯低気圧といった擾乱がないにも関わらず、雲の集団は毎日の衛星画像でも簡単に目にすることができます(例えば図2)。こうした低緯度域の雲の集団化に関して、最も重要な現象の一つにMJOとよばれるものがあります。
 MJOは、正式にはマッデン・ジュリアン振動(Madden-Julian Oscillation)といいます。米国の研究者のRoland MaddenとPaul Julianが、1971年に発見したのでこう呼ばれます。このMJOの特徴として、
 (1)雲群は主にインド洋で発生する(例えば図3
 (2)雲群は、ゆっくりと東向きに進む(1日あたり5度程度)
 (3)同じ場所では30-60日程度の周期で現れる
等が挙げられます。図4には、これらの特徴が模式的に示されています。
 これまでMJOに関して数多くの研究が行われてきました。しかし、(1) 大規模な雲群がどのようにインド洋上で出来上がるのか、(2) 出来上がった雲群が、どうしてゆっくりと東向きに進むのか? 等の基本的な問題点が、未だに解明されていません。発見から約40年たった今も、多くの研究者が、それらの謎の解明に向けて精力的に取り組んでいます。
 MJOは、低緯度域の日々の天気に大きく影響を与えているのですが、それだけでなく、図5に示しましたように、低緯度域における季節(卓越風:モンスーン)の入れ替わりにも関係していますし、エルニーニョ現象の発生・終息や、熱帯低気圧発生への関係も明らかになっています。これらのことから、MJOは、地球規模での気候や異常気象にも影響を与える現象として、気象研究の業界では、大変重要視されています。一方で、一般の方にとってMJOは、台風や温帯低気圧のように馴染みのある言葉とは、なっていないようです。このことから、当記事ではMJOを取り上げてみました。秋の台風シーズンになると、天気予報などでも、熱帯の雲活動の紹介と共に、MJOという言葉が出るかもしれません。その時には、当記事を思い出してもらえると幸いです。



図1:ある夏の日の午後に横須賀市付近で発達した積乱雲


図2:2011年11月25日00UTC のインド洋を中心とした領域の等価黒体温度の分布。白い色ほど温度が低い(高高度の雲)であることを示す。


図3:2011年11月22日00UTCから24日00UTCまでの6時間毎の赤道インド洋を中心とした等価黒体温度の変化。白い色ほど温度が低い(高高度の雲)であることを示す。最初インド洋全体に散らばっていた雲が、時間と共にインド洋の中央付近で、集団化していく様子が分かる。


図4:上図:MJOがインド洋で発生し、発達しながら西太平洋まで移動していく様子が模式的に描かれている。


図5:MJOの様々な地球規模の影響が、模式的に描かれている。

(地球科学科 安永数明)