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古地磁気の手法を用いた年代測定

【地球科学科】2012年3月

 地球は大きな磁石である.コンパスが北を指す理由として,この答えを導いたのは,イギリスのウィリアム・ギルバート(1544年–1603年)でした.地球の磁場(地磁気)は,様々な時間スケールで変化しており,その中でも最も劇的な変化は,地磁気のN極とS極が入れ替わる地磁気の逆転と呼ばれる現象です.この地磁気の逆転は,それほど珍しい現象ではなく,例えば過去1000万年を考えると,100万年に平均4~5回の割合で起きています.しかし,逆転のパターンは不規則であり,地磁気の成因と併せて,研究が進められています.

 ところで,なぜ過去に地磁気の逆転が起きた.ということがわかるのでしょうか?それは,岩石が磁石の化石(残留磁化)となって,当時の地磁気の方向を記録しているからです.磁石の化石ときくと,なにか特別な岩石を思い浮かべるかもしれませんが,実際には,あらゆる岩石-道端に落ちている石ですら,磁石の化石となっています.一般的に,岩石は形成した時の外部磁場の方向に磁石となります.従って,仮に別の方法で,岩石の年代がわかれば,その当時の地磁気の状態を復元することが可能になります.この地磁気の状態を年代ごとに推定し,まとめたものが古地磁気極移動曲線(APWP)と呼ばれるものです.このAPWPは,各大陸・地域で異なり,その結果,大陸移動などの議論が可能となります.年代測定では,APWPを時計の文字盤として,年代未知の試料から得た残留磁化の方向を時計の針と考え,年代を推定します.

 このAPWPを用いた年代推定法は,放射年代測定法の適応が困難な試料にも使用することができ,その例とてCentury亜鉛-鉛-銀鉱床をご紹介します.Century鉱床は,オーストラリア,クイーンズランド州の北西に位置する,世界規模の亜鉛-鉛鉱床です(図1).現在まで,確度の高い年代値は報告されておらず,鉱床の形成メカニズムは議論が続いています.鉱床の残留磁化の方向と安定性を検討した結果,鉱床形成時の安定な磁化を獲得していることがわかり,その方向から,約15億5800万年前という年代を求めることができました(図2).この結果から,鉱床は母岩と同時に形成されたのではなく,母岩の形成後に形成した後生であると考えられます.確度の高い年代情報は,鉱床形成過程の解明に必要不可欠な情報であり,磁気を用いた更なる研究が望まれます.

図1.Century亜鉛-鉛-銀鉱床の外観 図2.原生代の北オーストラリア大陸のAPWP (Idnurm 2000)とCentury鉱床から得た古地磁気極.求めた古地磁気年代 (1558±4 Ma)は,母岩の堆積年代 (1595±6 Ma)と有意に異なる.


(地球科学科 川崎一雄)