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世界の原野・森林火災と気候

【地球科学科・極東地域研究センター】2010年04月

1. 原野・森林火災とCO2放出

 化石燃料の燃焼など人間活動に由来する二酸化炭素(CO2)の放出の削減が取り組まれています。世界の原野・森林火災が燃焼時に放出するCO2の量は、こうした人為起源のCO2放出量(炭素換算で毎年7.2ギガトン)の20〜60%であると推定されています(IPCC (気候変動に関する政府間パネル)第4次報告書)。火災後、森林や植生が回復すればCO2が吸収され、再びその土地の植物や土壌に炭素(C)が蓄積されます。しかし、火災が高い頻度で起こるようになると、その土地が蓄えている炭素の量が減ります。このことは、陸域から大気へその分のCO2が放出することを意味します。今後、世界の原野・森林火災は、どのようになって行くのでしょうか?

2. 世界の原野・森林火災

 まず、現在の状況を見てみます。van der Werfほか(2006)の見積もりによると、 世界の原野・森林火災が燃焼時に放出するCO2のおよそ半分は、アフリカの火災によるものです。次いで、アマゾンなど南アメリカ、インドネシアなど赤道域アジア、およびロシア・北米など北方地域の3つがともに10%程度で、続いてオーストラリアが6%程度です。1997年から1998年のエルニーニョ現象の時には、原野・森林火災は、東南アジア島嶼部で、炭素換算で0.8〜2.6ギガトンのCO2を放出しました。2002年のシベリアの原野・森林火災は日本の国土の半分に相当する面積を燃やし、2004年のアラスカの森林火災は東京都と同じ面積を燃やしました。2002年の東シベリアと2004年のアラスカの森林火災を、それぞれ写真1と写真2に示しました。写真1は、水蒸気を多く含む白煙が接地逆転層の上に上昇し、黒煙が接地逆転層で止まっています。写真2は、黒トウヒ林の枯れ上がり乾燥した下枝から樹冠へと燃え移っているところです。世界の原野・森林火災の発火原因を見ると、北米で落雷によるものが人為を上回るのを除けば、多くは火の不始末によるようです。ただし、火災が大規模になるか、小火程度で収まるかは、気象条件が関わってきます。樹木や土壌の乾燥度によって燃えやすさが変わってくるほか、日射が大きい時や地表面温度が高い時には火災のエネルギーが大きくなります。

写真1. 東シベリアの森林火災による噴煙 写真2.アラスカの森林火災

3. 原野・森林火災の将来予測

 今後、地球が温暖化すると、原野・森林火災は増えるのでしょうか?温暖化が進むと、大気中の水蒸気量が増え、地球全体で見ると降水量が増えそうです。ただし、大気大循環モデル(GCM)の解析によると、極端な豪雨と極端な乾燥が起こりやすくなると言われています。GCM解析を用いた土壌水分量の評価によると、南アメリカ、南アフリカ、オーストラリア、米国、中央アジア、南ヨーロッパを始め、世界的に火災の起りやすさが増すと予想されています(Liuほか, 2010)。一般に、降水量が増えれば火災は起こりにくくなると考えられますが、北方地域ではあてはまらない場合があります。冬の積雪が多くても、冬から初春にかけての気温が高くなれば、雪解けの時期が早まり、春から初夏にかけて、植物や土壌が以前より乾燥した状態になり、火災が広がりやすくなります。

4. 原野・森林火災と気候

 こうした、原野・森林火災と気候との関係を見てみると、まだまだ解明されていないことが多いように思います。原野・森林火災は、CO2など温暖化ガス放出の他に、煤や煙の発生や土地被覆の変化を通じて、気候・気象に影響を及ぼします。場合によっては、温暖化への正のフィードバック効果を持つかも知れません。もちろん、火の不始末の程度や消火隊の仕事など人為も影響します。衛星による火災の規模や動態の地理的分布の把握、気象データ、現地観測を合わせて、原野・森林火災と気候との関係について研究を進めています。


(地球科学科・極東地域研究センター 串田圭司)


【引用文献】
Liu, Y., Stanturf, J., and Goodrick, S. (2010) Trends in global wildfire potential in a changing climate, For. Ecol. Manag., 259, 685-697.
van der Werf, G. R., Randerson, J. T., Giglio, L., Collatz, G. J., Kasibhatla, P. S., and Arellano, A. F. (2006) Interannual variability in global biomass burning emissions from 1997 to 2004, Atmos. Chem. Phys., 6, 3423-3441.