地球進化学講座


教授 大藤 茂   Email: shige @ sci.u-toyama.ac.jp

専門分野

地史学・構造地質学

メッセージ

困難を栄養にして成長できるような,ヴァイタリティーのある学生を歓迎します.

最近の研究から


 野外調査から得られる多様なデータを綜合して,固体地球,特にその表面の大陸・海洋の進化の歴史を明らかにしようとしています.さしあたっての研究対象は,アジア大陸と日本列島です.アジア大陸は複数のより小さな陸地の集合体であり,日本列島は大陸・島弧の断片と付加体(海洋プレート上の遠洋性堆積物が陸源堆積物と混ざって大陸や島弧に付加してできた地質体)とからなることがわかっています.しかし,アジア大陸の集合の歴史はまだ十分に解明されていませんし,アジア大陸の進化と日本列島形成史との関係は総合的に理解されてはいません.さらに日本列島の付加体には,過去3億年以上の海洋環境の記録が保存されていますが,その記録の解明はまだ始まったばかりです.
 アジア大陸や日本列島を構成する地質体の起源を知るには,(1) 比較層序(複数地域の同時代層の比較),(2) 古生物地理(同時代の生物分類群の分布),および (3) 古地磁気学的手法が有効です.また地質体の移動・集積に関する情報は,地質体の境界付近の (4) 変形構造に残されていることが多いです.これら (1)〜(4) のデータを綜合して,アジア大陸と日本列島の過去の姿を復元し,地球進化を支配する法則性を探っていきたいと思っています.以下に私の研究の一例として,日本海形成前の日本列島とアジア大陸との位置関係の復元案を示します.宮崎大学教育文化学部の山北 聡 さんとの共同研究です.

日本海形成前の日本とロシア沿海州との地質学的連続性(山北・大藤,1999:富山大学環日本海地域研究センター研究年報,XXIV,1-16).

第1図  日本海形成前の日本列島とアジア大陸との相対的位置関係を,下記のような手順で復元しました(第 1 図).

(1)沖縄トラフをつぶす
 沖縄トラフの拡大は日本海の拡大以降ですので,日本海形成による変形を復元する前に,沖縄トラフをつぶしておく必要があります.ここでは沖縄トラフを閉じて,日本列島を西へ 100 km 弱移動させました.すると,中央構造線(MTL)の陸上の西端部八代は,五島列島南方へ移動します.ここは丁度,シホテアリン中央断層の南西延長 1250 km 地点となります(第 1 図).

(2)中央構造線を直線とし,西南日本弧を回転する
 中央構造線は現在,うねった形態をしていますが,もともとは直線的だったと近似できます.中央構造線の湾曲の内弧側には島弧に平行な短縮の痕跡(メガキンクなど)が,外弧側には島弧に平行な伸長の痕跡(開裂盆地など)が見られるからです.ただし赤石山地の中央構造線は,糸魚川‐静岡線にほぼ平行な単純剪断に近い変形を受けていると見られるので,糸魚川‐静岡線に直交する方向の長さ成分を,赤石山地中央構造線の元々の長さと見積もりました.この様にして直線化した中央構造線の長さは約 1000 km となります.
 次に,日本海の水深 500 m 以深の部分をつぶしながら,西南日本弧を大体古地磁気データ通りに回転させてやります(反時計回りに40〜65度).すると,直線化した中央構造線が,シホテアリン中央断層(CSF)の延長線上にほぼ位置するようになります.中央構造線とシホテアリン中央断層との間には,約 250 km の隙間が残ります(第 1 図).

(3)東北日本弧を回転する
 上記の 250 km の隙間は,棚倉構造線(TTL)や畑川構造線(HTL)の長さにほぼ匹敵します.従ってもともとは,両断層が中央構造線とシホテアリン中央断層(&パルチザンスク断層)の間を埋めていたことが期待されます.
 現在の日本列島の外形を保ったまま,上記の様な復元を行うことはできません.しかし,北海道〜東北日本日本海側および北部フォッサマグナの新第三系(〜第四系)分布域の下には先第三紀基盤岩類が乏しいと仮定して,これらの分布域をつぶしてしまえば,畑川構造線および棚倉構造線を,それぞれシホテアリン中央断層およびパルチザンスク断層に接続させることが可能です(第 1 図).

第2図  以上の様に,これまで考えられていなかった島弧内変形を仮定すれば,ロシア沿海州〜東北日本〜西南日本の白亜紀大断層を一直線につなげるような復元が可能になります.これらの仮定の下に描いた復元図が,第 2 図です.
 上記の復元(案)の結果,西南日本‐東北日本‐沿海州の類似した地質体および地質構造が,比較的よく連続するような復元図ができます.特に,よく似たジュラ紀付加体を特徴的な構成要素とする (1) 丹波帯‐美濃帯‐足尾帯‐サマルカ帯と,(2) 三宝山帯‐北部北上帯‐タウハ帯は,いずれもきれいに連続するように見えます.また日本列島〜沿海州には中国のタン・ルー断層系に匹敵する大断層系があり,(1) と (2) の間は複雑なデュープレックスをなすように見えます.
 この復元案の可否を実証するには,まだまだ長い茨の道が待ち受けています.しかし,この様な地質を考慮した復元図の作成は,アジアの先第三紀(6,500 万年以上前)のテクトニクスを論ずる上で欠かすことができません.