富山大学理学部生物学科 山崎研究室

ヤツメウナギの種分化

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 ここでは,2007年度日本魚類学会奨励賞受賞記念講演を参考に,ヤツメウナギ類における種分化と系統進化について紹介します.(2007年10月19日作成)

 ヤツメウナギ類は最も原始的な脊椎動物の一群として知られており,脊椎動物の進化を探る目的で,様々な研究に用いられています.
 ヤツメウナギ類は,南北両半球の中高緯度地域に約40種生息しており,日本を含む東ユーラシア地域からは,主に4種のヤツメウナギが報告されています.
 これまで,日本に生息するヤツメウナギ類としては,カワヤツメ属3種,ミツバヤツメ属1種が報告されており,形態に基づいた分類がされてきました.
 ところが,当研究グループにおけるアロザイム解析の結果,従来単一の種として扱われてきたスナヤツメに,高度に遺伝的分化を遂げた2群が存在することが明らかになりました.
(Yamazaki and Goto, 1998ほか)
 スナヤツメ2群は,同所的生息地においても生殖的隔離が存在することから,生物学的種概念に基づき,それぞれが独立した種であると考えられます.

 そこで分布パタンから,スナヤツメ北方種と南方種と呼ぶことにします.
(Yamazaki et al., 1999ほか)

 スナヤツメ種群の特徴は,形態的特徴が類似していることです.そのため,両者は隠蔽種群に相当すると考えられます.
(Yamazaki and Goto, 1997)
 スナヤツメ隠蔽種群について,産卵生態を調べた結果,産卵群は必ずどちらか一方の種により構成されていました.このことから,種特異的な認知機構を有しており,これが交配前隔離機構として働いていると考えられます.
(Yamazaki and Goto, 2000)
 ミトコンドリアDNAに基づいて系統関係を調べた結果,カワヤツメ,シベリアヤツメ,そしてスナヤツメ北方種の3者(カワヤツメ種群)が単系統群を形成しました.一方,スナヤツメ南方種は3者とは離れた系統的位置を示しました.
(Yamazaki et al., 2006)
 カワヤツメ種群における種分化の方向性を明らかにするために,腸管内部構造に注目した結果,非寄生性種において,寄生性祖先種の遺存形質が見つかりました.このことから,寄生性祖先種から非寄生性種が生じたことが推察されます.
(Yamazaki et al., 2001)
 また,調査を進めると,寄生性・回遊型のカワヤツメに,非寄生性・河川型の生活様式を持つ矮小成熟個体が出現することが明らかになりました.
(Yamazaki et al., 1998)
 以上のことから,カワヤツメ種群における種分化プロセスを考えると,まず寄生性・回遊型のカワヤツメあるいはその祖先種から,生活史多型として矮小成熟個体が出現していました.
 やがて交流を阻害する障壁が出現したことにより,非寄生性・河川型の集団が独立します.そして遺伝的分化の進行を伴い,やがて生殖的隔離が成立することにより,種分化が成立したと考えられます.
(山崎・後藤, 2000)
 以上のことから,カワヤツメ種群においては,シベリアヤツメとスナヤツメ北方種がそれぞれ独立に派生し,生活様式の平行進化が生じたと考えられます.

 またスナヤツメ南方種は,カワヤツメ種群にミツバヤツメ属などを含めた共通祖先の遺存種であると考えられます.
(Yamazaki et al., 2006ほか)

※種分化に関する内容については,今後適宜追加・改訂していきます.
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