Maekawa Lab
Contents
1) Research Topics
2) Publications
3) Lectures
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5) Members
6) Links

Research Topics [I, II, III, IV, V, VI, VII, VIII, IX, X, XI, XII, XIII, XIV, XV]

I. シロアリはどのようにしてソルジャーを作るか?

 昆虫の中には,多くの個体が集まって集団生活を営むものがいます。そのような「社会性昆虫」はアリやミツバチがよく知られていますが,家屋害虫として名高いシロアリも挙げることができます。シロアリは,アリやハチと違って蛹のステージを持たず,卵から脱皮を重ねて大きくなる不完全変態昆虫です。巣内には,非常に形態が特殊化した個体(カースト)が存在し,各カーストが各々の仕事に従事しています。例えば,女王や王は大きく発達した生殖巣をもち,繁殖に専念します。ワーカーは生殖巣を発達させず,採餌や幼虫などの世話を行いますが,ソルジャーは巨大な大顎など,特殊な武器を使って外敵の侵入を防ぎます (図1)。
 巣内のどの個体がどのカーストになるか(カースト分化)は,あらかじめ完全に決められているわけではなく,発生の途中で個体間相互作用や環境要因により生理状態が変化することによって決定されると考えられています。このカースト分化という現象は古くから興味を持たれてきましたが,各個体にどのようなことが起こっているのかという至近的な要因や,分化の調節メカニズムに関しては全く分かっていません。私たちは,この興味深いカースト分化という現象に注目し,富山県でも普通種であるヤマトシロアリReticulitermes speratusなどを材料に,いかなる要因がカースト分化を規定・調節しているのかを明らかにしようとしています。例えば,他の昆虫の成虫が通常持っている器官(複眼,翅,生殖巣など)は,ワーカーやソルジャーではどうなっているのかを組織レベルや遺伝子発現レベルで調べています。その結果,特にワーカーやソルジャーの複眼の発生は,かなり特徴的に抑制されていることが明らかになってきました (図2; Maekawa et al. 2008)。また,巣の防衛に特殊化した形態をもっているソルジャーは,巣内で一定の割合に保たれる必要がありますが,巣内にもともと存在するソルジャーが,新たなソルジャーの分化を抑制することが示されています。その際にソルジャーは,何らかの方法により,ソルジャーに特徴的な大顎の形成にまで影響を与えることが分かってきました (図3; Tsuchiya et al. 2008)。
 世界には熱帯を中心に約2,500種のシロアリがいます。中には非常に面白い形をしたカーストを持つものもいます (図4)。シロアリは現在のゴキブリのような昆虫から進化したと言われていますが,どのようにして高度な社会性を獲得するようになったのかは非常に興味深い問題です。この未解明の問題を解くために,他大学の専門家とも共同して研究を進めています。[前川清人,2008年8月29日]

<参考文献>
Maekawa K, Mizuno S, Koshikawa S & Miura T. (2008) Zoological Science, 25: 699-705.
Tsuchiya M, Watanabe D & Maekawa K. (2008) Applied Entomology and Zoology, 43: 307-314.

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